AIってどれくらい進化した?無人店舗、絵を描く、病気の発見、ナスカ絵も

「AI(人工知能)って最近あまり騒がれなくなった」と感じていないでしょうか。チェスや囲碁で世界チャンピオンをAIが倒したというニュースは遠い昔のことのようです。

しかしAIは着実に進化していて、実用化段階から活躍する段階に入っています。AIは確実に生活を便利にして、人を幸福にして、楽しませてくれています。

最近のAI事例として次の4つを紹介します。

■AIの活躍が目覚ましい領域

1)無人店舗での支払い(決済)

2)絵を描くAI

3)病気の検出

4)ナスカの地上絵の発見

どれもワクワクさせるものばかりです。

無人店舗での支払い(決済)

コンビニやスーパーマーケットなどの小売店にとって、レジは頭痛の種になっているはずです。客が多く来店してくれることはありがたいことですが、レジに長い行列ができると店の印象が悪くなります。

レジの数を増やせば解消できますが、それは機器を購入したり、場所を確保したり、人員を増やしたりと費用がかかります。しかし、レジが直接利益を生むわけではないので、そこへの投資は二の足を踏んでしまいます。だからといってレジは客から代金を受け取る工程なので省略できません。

この悩みを解決するのが無人店舗の技術で、ここでAIが活躍しています。

無人レジではレジ問題は解決できず無人店舗が必要

無人レジと無人店舗は別物です。

客にレジ作業をさせて、店員は見守るだけの無人レジだけでは、レジ問題を解決できません。なぜなら無人レジは客に自分で商品登録や袋詰めや支払い手続きをしてもらうので、むしろレジ作業の時間が増えてしまうからです。ベテラン店員がレジ打ちをしたほうが早く終わります。

一方、無人店舗では、客が購入する商品を手にしたら、支払いの手続きをするタッチパネルの前に立つだけでほぼすべての作業が終わります。

客がタッチパネルの前に立つと、何の操作もしないまま瞬時に手にした商品の種類と個数、代金が表示されます。その内容に間違いがなければ、クレジットカードやスマホ決済などで支払いを済ませるだけです(※1)。

※1:https://ttg.co.jp/info/2020/05/1518/

無人店舗の仕組みとAIが使われている場所

無人店舗にはいたるところにカメラやセンサーが配置されていて、客がどの商品を何個取ったかを把握します。そのデータが、レジ機能が搭載されたタッチパネルに送られ瞬時に代金を表示します。

カメラやセンサーはAIで分析されます。

AIカメラは例えば「人が商品を手にした」動作を「人が商品を手にした」と認識します。また「一度手にした商品を棚に戻した」動作も「一度手にした商品を棚に戻した」と認識します。これで正しく金額を請求できます。

さらにAIカメラは、客が手にした商品がどの商品であるかをみわけます。

これができるのはAIに画像認識の能力があるからです。AIカメラはAという商品を「見て」商品Aであると「認識」します。「見る」も「認識」も人の能力を表す表現ですが、AIは画像に映った物体や意味や情報を読み取るのでそのようにいえるのです(※2)。

AI画像認識の価値は、識別チップと比べると理解しやすいでしょう。

商品Aに識別チップを埋め込めば、検知機器が識別チップを認識して「商品Aである」と判別できます。しかしこれは識別チップを検知しただけで、商品Aを認識しているわけではありません。同じ識別チップを商品Bに埋め込んだら、検知機器は商品Aと判別してしまうでしょう。AIはこういったミスをおかしません。

※2:https://laboro.ai/activity/column/laboro/image-recognition/

レジ機能もなくした超無人店舗も登場

日立製作所はレジだけでなくレジ機能もなくした無人店舗を開発しました(※3)。つまり、客が店のなかに入って商品を取ったら、そのまま何もせず店の外に出てよいのです。これだけで客のクレジットカードから商品の代金が引き落とされ、支払いが完了します。

この超無人店舗を実現できたのは3D LiDARというセンサーのおかげです(※4、5)。

リアルの物体は3次元なわけですが、3D LiDARは物体を3次元のままとらえます。超無人店舗の3D LiDARは客の姿形を3次元でとらえます。姿形の3次元データは唯一無二なので、このデータとクレジットカードの情報を結びつけることができます。

店内で客が商品を取ったら、AIは「この3次元データと同じ姿形をした人」が「商品を取った」と把握します。姿形の3次元データによって本人を特定できているので、その人のクレジットカードから代金を引き落とすことができます。

この3次元データの認識にもAIが使われています。

絵を描くAI

絵を描くAIのことを画像生成AIといいます。

画像生成AIの画力はすでに「普通に上手に描ける人」のレベルをはるかに超えています。例えば画像生成AIに「ゴッホの自画像」を描くように指示すると、ゴッホのタッチでゴッホの顔を描いていきます(※6)。

画像生成AIの実力がわかるサイトを日本経済新聞がつくっているのでぜひ閲覧してみてください。サイトのURLは以下のとおり。

■日本経済新聞「AIが描く絵、見分けられる?」のURL

※6:https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/ai-art/

画像生成AIが、ゴッホやルノワールや葛飾北斎が描いたような絵が描けるのは、23億点もの絵や写真を「見せて」学習させているからです。アメリカのメトロポリタン美術館でも絵は200万点しかないので、画像生成AIの学習量が桁はずれであることがわかります。

だからといって画像生成AIは、学習した絵や写真を切り貼りして新たな絵をつくっているわけではありません。

画像生成AIは、例えば「京都の海」という絵をつくるよう指示されると、23億枚のなかの京都と海の絵・写真からその特徴を探ります。このとき画像生成AIは、特徴をベクトルという数値に変換します。

そして画像をベクトルに近づけていく作業を繰り返していき、作品をつくりあげます。

病気の検出

病院の医師は病気の検査において多くの画像を使います。X線やCT、MRI、内視鏡などで撮った画像を医師がみて、病変や病気の兆候がないか調べます。

富士フイルムは、胃がんや食道がんを検知するAI内視鏡を開発しました(※7)。

胃や食道の内視鏡検査では、医師が内視鏡の管を患者さんの体内に挿入し、管の先端が映し出す画像をライブ動画でみながら病変を探します。

富士フイルムのAI内視鏡は、基本構造は従来の内視鏡と同じなのですが、医師が内視鏡を操作しながらライブ動画を確認しているときに、AIも同じライブ動画を「見て」がんを探します。

そしてAIが、がん疑いのある箇所を発見したら警告音を鳴らして医師に知らせるのです。医師はその場所を集中的に観察し、必要に応じて組織を採取したりすることができます。

オリンパスは、大腸内視鏡が撮影したがん細胞の画像から、進行した浸潤がんかどうかを判別するAIを開発。これにより、医師は手術が必要かどうか判断することができます(※7)。

AIのがんを見る「目」はもはや、少なくとも新人の医師は超えています。

※7:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC189BX0Y2A011C2000000/

ナスカの地上絵の発見

ナスカの地上絵にちびまる子ちゃんが描かれていた、と聞いたら驚くでしょうか。

実際の写真は著作権の都合でここに掲示できないのですが、山形大学のプレスリリースでそれが確認できます。URLは以下のとおり。

■ちびまる子ちゃんに似たナスカの地上絵を紹介した山形大学のプレスリリースのURL

URL:https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/press/01-21-3-21/

山形大学の坂井正人教授(文化人類学)は2022年12月、ペルーのナスカ台地で、新たな地上絵を168点みつけたと発表しました(※8)。

ナスカの地上絵は、広くて平らな砂漠の地表面に砂利の色わけによって描かれたもので、今から2000年以上前に描かれたものといわれています。大きなものは100メートル以上もあるため地上からでは絵とは認識できず、飛行機に乗ってようやくみることができます。

ただ風化によって不鮮明なものもあり、上空から人の目でみても絵と確認できないものが多数あります。

そこで山形大学の研究チームは航空写真を撮ってAIで解析し、地上絵らしきものがある場所を特定しました。そして人の目で地上絵かどうか鑑別します。

坂井氏によると、地上絵が残されている場所は鉱山開発などが進み、地上絵と気づかれず破壊されてしまう可能性があるそうです。

AIを使って地上絵とわかればそれが観光資源となり保護対象となるので、開発を止めて破壊を食い止めることができるかもしれません。

※8:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF090DU0Z01C22A2000000/

まとめ~AIは救う

AIが世間をにぎわせたころ、人間の仕事が奪われると警戒されたことがありました。しかしそれからだいぶ月日が経ちましたが「AIを導入した会社が従業員を大量解雇した」というニュースは伝わってきていません。

AIが実用レベルに進化して生活や仕事のなかで普通に使われ始めると、これに救われることがわかってきたようです。まさにAIと共生する社会です。

AIはまだまだ社会と生活と経済をよくしてくれるでしょう。