スマホ決済はなぜ”ピッ”で済むのか?QRコード・非接触ICとは
スマホ決済はなぜ、スマホを店の端末にかざして「ピッ」とするだけで支払いが完了するのでしょうか。
金融をテクノロジーで進化させることをフィンテックというのですが、スマホ決済はまさにフィンテックです。スマホ決済が簡便で使いやすいのは、その裏で高度なシステムが動いているからです。
スマホ決済に使われている2つのシステム、QRコード型と非接触IC型を解説します。
スマホ決済の定義
スマホ決済とは、スマホにインストールした専用アプリを使って、店や飲食店などで支払いを済ませることです。スマホ決済を設定しておけば、スマホを持っていれば、財布を持たず外出することができます。
QRコード型と非接触IC型
スマホ決済の仕組みには大きく、QRコード型と非接触IC型の2種類があります。この2つが、現行のスマホ決済の2大システムです。
QRコード型
QRコードは、正方形の枠のなかに白と黒の模様が入った印刷物で、暗号のような機能を持っています。
暗号は、一般の人がみたら意味のない文字や数字の羅列でしかありませんが、そのなかに情報が隠されています。それと同じようにQRコードの白黒模様にも情報が盛り込まれています。
特殊な機器をQRコードにかざすと、QRコードに入力した文字情報や画像情報などを取り出すことができます。バーコードも白黒模様の暗号のようなものですが、QRコードはバーコードより多くの情報を盛り込むことができます。
QRコード型は、ペイペイ、auペイ、楽天ペイなどが採用しています。
スマホ決済で使われるQRコードには、消費者提示型と店舗提示型の2種類があります。
●消費者提示型のQRコード・スマホ決済
消費者提示型では、客が自分のスマホ・アプリにQRコードを表示させて、店の店員に端末でそれを読み取ってもらいます。
客のスマホ・アプリのQRコードには客の個人情報と決済関連情報が入力されていて、それらの情報が店の端末に移り、店が使っているコンピュータで決済処理します。
「店が使っているコンピュータ」といっても店内にパソコンがあるわけではなく、客の情報はスマホ決済サービス業者のコンピュータに送信され、そこで処理されます。
消費者提示型QRコードは、店(ストア)が客のQRコードを読み取る(スキャンする)ので、ストアスキャンと呼ばれることもあります。客はスマホ画面を店の店員に提示するだけなので簡単です。
一方店側は、QRコードリーダーや読み取り専門端末を用意し、レジと連携させる必要がありコストがかかります。しかし、売上データを店で管理できるので、在庫管理や経理業務、マーケティングを効率化できるメリットもあります。
●店舗提示型のQRコード・スマホ決済
店舗提示型のQRコード・スマホ決済では、店が提示するQRコードを、客が自分のスマホのアプリで読み取ります。
店は大抵、レジ横にQRコードを印刷したものが掲示して、客のスマホでそれを読み取ってもらいます。客は店のQRコードを読み取ったあと、スマホに支払額を入力して、店の人に確認してもらい、OKであればタップして支払いが完了します。
客は、消費者提示型より少し手間がかかりますが、それでも十分簡便で、慣れれば気にならないでしょう。
店のQRコードには、店の情報が入力されているので、客のスマホでQRコードを読み取ることで、スマホ・アプリが店情報を獲得します。客のスマホ・アプリが「この店でこの商品を買って決済をした」というデータが、スマホ決済サービス業者のコンピュータに送信されます。
店舗提示型QRコードは、客(ユーザー)が店のQRコードを読み取るので、ユーザースキャンと呼ばれることもあります。店は自分の店のQRコードをレジ横に掲げるだけでよく、専用端末を用意する必要がないのでコスト安です。
非接触IC型
非接触IC型スマホ決済の「非接触」とは、機器などに接触させずに処理を完了させる、という意味です。
非接触を実現させているのは、NFC、フェリカ、ブルートゥースなどの無線通信技術です。非接触IC型スマホ決済では、スマホに内蔵された部品が無線で情報を送受信して、情報やデータをやり取りします。
客が支払いのときに、店にある読み取り端末にスマホをかざすと、読み取り端末が磁界を発します。その磁界が、スマホ内のICタグを検知し、ユーザー情報を入手して決済を済ませます。
非接触IC型は、スイカ、エディ、ナナコ、クイックペイなどが使っています。
支払い方法は、前払い、後払い、即時払い
ここまで情報とデータのやり取りの方法を紹介しましたが、ここからはスマホ決済のお金の流れについてみていきます。
スマホ決済でのお金の支払い方法は、前払い、後払い、即時払いの3種類があります。
前払い
スマホ決済のアプリに事前にお金をチャージして、その金額を限度額として買い物ができるのが前払いです。チャージした分しか使えないので使いすぎ予防になります。
ただクレジットカードと連動したスマホ決済にはオートチャージ方式があり、これだとチャージ額が少なくなると自動でクレジットカードからチャージされるので、前払いでも使いすぎ予防にはならないので注意してください。
後払い
クレジットカードと連動したスマホ決済の場合、クレジットカードの支払いと同じように後払いになります。これはクレジットカードの決済ツールが、プラスチック・カード方式からスマホ方式に変わっただけといえます。
即時払い
スマホ決済の即時払いは、デビットカードと同じ仕組みです。店でスマホ決済をすると、その金額が瞬時に銀行口座から引き落とされます。口座内の金額以上は使えないので、使いすぎ予防になります。
お金の流れ
スマホ決済はキャッシュレスと呼ばれ、現金を使わない支払い方法です。しかし最終的には、客の持ち金が減り、店のお金が減ります。そこで「後払い」の「店舗提示型のQRコード・スマホ決済」を例に取り、お金の流れを追っていきましょう。
アクション1
客が商品を買うと、店員は客に「スマホ・アプリで店のQRコードを読み込んでください」と依頼します。
客が自分のスマホで店のQRコードを入力したら、アプリに支払額を入力して、店の人に確認してもらい、OKであればタップして支払いが完了します。
この時点では現金は動いていません。
アクション2
スマホ決済が完了すると、客のスマホ・アプリから店情報と買い物情報(決済情報)が、スマホ決済サービス業者に送信されます。
スマホ決済サービス業者のコンピュータは、その情報を元に客の銀行口座にアクセスして、口座引き落としの申請をします。その申請が通ると、後日、客の銀行口座のなかのお金が、「スマホ決済サービス業者の銀行口座に移る」ことになります。
ここでのポイントは、客の銀行口座のお金が、「スマホ決済サービス業者の銀行口座に移っている」点です。この時点ではお金は「店の銀行口座に移るわけではない」のです。
つまりこの時点では、店はまだお金を得ていません。
アクション3
スマホ決済サービス業者は、客のスマホ・アプリから送られてきた店情報と買い物情報(決済情報)を元に、「店の銀行口座にお金を振り込みます」。
このときスマホ決済サービス業者は、客が購入した商品の代金から手数料を差し引いた額を「店の銀行口座に振り込みます」。この手数料が、スマホ決済サービス業者の収入になります。
店は、この時点で客に売った商品の代金を回収できるわけですが、手に入れることができる金額は、その代金より手数料分だけ少なくなっています。この手数料が、店がスマホ決済を利用するときの利用料になります。
ここまでの流れを箇条書で追ってみましょう。
●客が店でQRコード・スマホ決済をする
↓
●客のスマホ・アプリがスマホ決済サービス業者に、店情報と買い物情報(決済情報)を送信する
↓
●1:スマホ決済サービス業者は、客の銀行口座のなかのお金を、スマホ決済サービス業者の銀行口座に移す処理を行う
●2:スマホ決済サービス業者は、手数料を差し引いて、客が買った商品の代金を店の銀行口座に振り込む
使いやすいだけじゃない、その他のメリット
スマホ決済は現金不要、クレジットカード不要、財布不要であるため便利ですが、さらに次のようなメリットもあります。
<スマホ決済のその他のメリット>
●客にはポイント還元が頻繁に行われる
●客は支払い履歴が残るから家計簿代わりになる
●店は売上や販売のデータがデジタル化されるので、コンピュータで簡単に経理処理できるようになる
店は、スマホ決済サービス業者から、スマホ決済システムの利用料(手数料)と徴収されますが、客は無料で利用できます。しかも客にはポイント還元が行われます。
客にこれだけ得することができるのは、スマホ決済サービス業者が客の取り込みを図ろうとしているからです。スマホ決済黎明期の特典と考えることができます。
まとめ~みえないから余計に便利に感じる?
生活インフラになりつつあるスマホ決済の裏側を紹介しました。
「スマホでピッ」で店での支払いが済むスマホ決済は、よくよく考えると不思議です。不思議な感じがするほど簡便かつスピーディーでないと、消費者はわざわざスマホ決済を使おうと思わないので、スマホ決済関連の企業はITとネット技術を駆使して高度なシステムをつくりあげたわけです。
スマホ決済システムは多くの部分がブラックボックスになっているので、みえない分、それだけ余計に便利に感じませんか。