サブスクはここまできた!キャッシュレスの後押しがあってさらに進化
サブスクリプション(以下、サブスク)は古くて新しいビジネス形態といえます。
サブスクを定額払いで製品やサービスを利用する仕組みと定義すれば、宅配の新聞も月極駐車場もこれに含まれてしまいます。しかし新聞や駐車場をサブスクと呼ぶのは少し違和感があります。
サブスクと呼ばれるには、今日的な要素が必要でしょう。
キャッシュレス決済は、サブスクの今日的な要素となります。
現金を使わず、お金のやり取りをデジタルデータだけで行うキャッシュレスは、今日的でありサブスクにマッチしています。
そして実際、サブスクとキャッシュレスはとても相性がよく、両者のコラボは小売サービスの質を高めています。
この記事では最新のサブスク情報を紹介したうえで、キャッシュレスとサブスクの融合を解説します。
サブスクリプションとは
日本経済新聞はサブスクを次のように定義しています(※1)。
サブスクとは
毎月定額の支払いで製品やサービスを利用する仕組みで、動画や音楽の配信のほか、自動車や飲食店、洋服の利用などさまざまな分野に浸透しつつある
この定義の前半部分(毎月定額の支払いで製品やサービスを利用する仕組み)だけなら、やはり宅配新聞や月極駐車場も含まれます。
しかし日本経済新聞は、サブスクの対象を動画、音楽、自動車、飲食店、洋服としていて、宅配新聞や月極駐車場をあえて含めていません。
これまで定額払いに馴染まなかった製品やサービスを定額払いで提供したとき、それをサブスクと呼ぶと考えてもよさそうです。
※1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE052T50V00C22A2000000/
企業と消費者のWin-Winが成立するが、メリットは企業のほうが断然大きい
このようなサブスクが登場しています。
- 全国各地の家に住み放題
- 腕時計を貸し出すサブスク
- 絵画を貸し出すサブスク
- 自動車のサブスク
今や何でもサブスクになる時代で、ベンチャー企業だけでなくトヨタのようなメガ企業も参入しています。
「なんでもサブスク化」が起きているのは、企業と消費者がWin-Winの関係を築けるからでしょう。
消費者が多くの商品や多くのサービスを手に入れたいと思ったら、多額の資金が必要になります。さらに多くの商品を所有したり、多くの登録や契約をしたりしなければなりません。
しかしサブスクなら、消費生活を謳歌しつつも支払い額を抑えることができ、所有も減らせます。
ただ、サブスクの恩恵は企業のほうが大きいでしょう。実際は「Win-Win」というより「WIN(企業)-win(消費者)」といったイメージです。
企業にとってサブスクで商品やサービスを提供することは、実質的に割引して売ることになり、それは利益を減らします。
しかし企業は、サブスクにしないことも選択できます。付加価値が高く、他社が同じものを販売することができず、消費者が高額な値段でも購入する商品やサービスは、通常の方法で販売してしっかり利益を確保することができます。
つまり企業は、サブスクにしたほうが利益が出るものだけをサブスクに出すことができるので、実質的な割引の痛手はそれほど大きくなりません。
しかもサブスクにすると将来の売上高をかなり確実に予測できるので経営が安定します。このメリットが得られるのであれば、実質的な割引の痛手というコストも安いでしょう。
まだあります。
サブスクによって企業は顧客を囲い込むことができます。例えば契約期間を最低6カ月として、その6カ月間の料金を割り引けば、消費者は喜んで6カ月契約を結ぶでしょう。
販売担当者や営業担当者なら、1回の契約で6カ月間も顧客を確保できることがどれだけ素晴らしい取引であるかわかると思います。
顧客を6カ月間つかまえておけるサブスクは、企業の理想のビジネス形態といえるのではないでしょうか。
コカ・コーラは月2,700円で月31本飲める
ちょっと変わったサブスクとして、コカ・コーラの事例を紹介します(※2)。ただ現在はこのサービスは終了しています。
コカ・コーラの商品でなぜサブスクができたのか、その「カラクリ」をみていきます。
※2:https://c.cocacola.co.jp/app/pass/
「月31本まで、1日2本まで、最大2,100円お得」でも十分なうまみ
コカ・コーラのサブスクは、月2,700円支払うと自動販売機で飲み物を最大月31本、1日2本まで入手することができるという内容です。
自動販売機限定であり、コンビニやスーパーでの販売分は対象外です。
実質的に2,700円で31本のジュースやコーヒーを買うことになるので、1本87円(≒2,700円÷31本)になります。缶やペットボトルの価格は120円や160円なので、フルに活用すれば最大月2,100円お得になります。
コカ・コーラは割引価格で売るので利益が減りますが、もし契約者が何日か買い忘れたら1日2本までというルールがあるので、コカ・コーラとしては割高で販売したことになります。
また、契約者がフルに月31本買ってコカ・コーラの利益が減ったとしても、この契約者が他社のジュースを買うことを阻止できるので、コカ・コーラとしてうまみがあるわけです。
これができたのはキャッシュレスを導入したから
このサブスク・モデルはとても優れています。
コカ・コーラが自動販売機のサブスクを実現できたのはキャッシュレスを組み合わせたからです。
このサブスクは、ペイペイ、d払い、アップルペイ、クレジットカードしか使えませんでした。現金で支払うことはできません。
このサブスクでは、1人のユーザーが何本のジュースを買ったのか数えないとならないので、デジタルやITを使うしかありませんでした。そうなると支払いもデジタルにしなければならず、キャッシュレスを使ったわけです。
コカ・コーラのこの実験は、まさにキャッシュレスがサブスクの質を高めた好例といえるでしょう。
サブスク事業は意外に面倒だからキャッシュレス
コカ・コーラのような大企業なら、大規模システムを導入してサブスク事業を管理できますが、中小企業はそうはいきません。
企業にとってサブスク事業は、顧客から月額料金を受け取って自社商品・サービスを利用させる「だけ」なのですが、その事務処理は意外に面倒です。
サブスク事業の事務では次のような課題を抱えることがあります。
■サブスク事業の事務処理で想定される課題
- 料金形態が複雑で計算ミスを起こしやすい
- 請求パターンが複数あって請求漏れが起きる可能性がある
- 契約更新の案内ができないと機会損失を生むことになる
- 売上実績、前受金、売掛金の管理、集計に手間がかかる
これらの課題を解決できないと、サブスク事業のメリットが相殺されてしまいます。
このソリューションになるのがキャッシュレス決済です。
サブスク企業がキャッシュレスを導入するメリット
企業がサブスク事業の事務手続きを簡素化して、サブスクのメリットだけを獲得するには、キャッシュレスを導入するとよいでしょう。
A社のサービス内容
サブスクの決済をサポートするサービスがすでに存在します。
A社のサブスク決済サービスを紹介します(※3)。
サブスク決済サービスを導入したサブスク店は、顧客にクレジットカードを登録してもらいます。この登録によって決済(支払い)が自動化されます。
支払日を設定できるほか、サブスク店がすでに導入している会員管理システムと連動させることができます。
A社は、ホテル、ゴルフ場、鍼灸接骨院、家賃、月ぎめ駐車場、コインランドリー、コワーキングスペースなどのサブスク企業、サブスク店の利用を想定しています。
※3:https://pcireadycloud.com/smarttg/
何ができるのか
A社のサブスク決済サービスを導入したサブスク店は、次のようなサービスを顧客に提供できます。
- 料金の自動徴収
- 複数の課金体系を設定できる
- 上級品を販売するアップセルや、別の商品を販売するクロスセルを強化できる
- 会員管理と決済を連動できる
サブスク決済サービスは顧客の利便性を高めることもできます。
■サブスク決済サービスによる顧客の利便性
- キャッシュレス決済を使える(現金要らずで便利)
- クレジットカードのポイントが貯まる
- 毎月の支払いの手間が省ける
- 現金を使わない。例えば塾の月謝であれば、子供に現金を持たせなくてよい
B社のサービス内容
B社のサブスク企業向けキャッシュレス・サービスは、顧客のクレジットカードと連動させています(※4)。サービスの流れはこのようになっています。
- サブスク企業がB社と契約すると、決済端末機が支給されます
- サブスク利用者(顧客)が行う登録は初回の支払い1回だけ
- 決済端末機が1人の顧客に1つのIDを発行し、顧客のクレジットカード番号と紐づけます
- 2回目の支払いからは、サブスク企業が管理画面から決済処理するだけ
- 導入企業(サブスク企業)は決済タイミングも金額も自由に設定できます
サブスクとキャッシュレス(クレジットカード決済)はもう、簡単にドッキングさせることができます。
※4:https://www.cardservice.co.jp/service/subscription/
まとめ~キャッシュレス導入はサブスクのIT化といえる
サブスクは、必ずITが要るわけではありません。しかし企業が新たにサブスク事業を始めたのに事務のIT化が進んでいないと、サブスク事業の事務と非サブスク事業(既存事業)の事務が2本立てになり、事務作業量が2倍になります。
これは非効率です。
したがってサブスク企業は意識してIT化して事務作業量を減らしていかなければなりません。
キャッシュレスやそれに関連するシステムの導入は、サブスク事業を導入しながら生産性を上げるために必要な投資といえるでしょう。