国ごとに違う決済ライセンス|米国・EU・アジア進出で必須の知識
海外展開で避けて通れない「決済ライセンス問題」
企業が海外でオンラインサービスを展開する際に最初に直面する壁が、国ごとに異なる決済ライセンス制度です。
国内では資金移動業者や前払式支払手段発行業者として登録すればよいケースが多いですが、海外では各国で定義や要件が大きく異なります。
ライセンスを取得せずに決済サービスを提供した場合、罰金や事業停止に至ることもあり、慎重な対応が求められます。
グローバル決済を安全かつ合法的に行うためには、各地域の制度を正しく理解し、自社サービスがどの範囲に該当するかを見極めることが重要です。
米国:州ごとに異なるライセンス制度
アメリカは連邦制度のため、決済ライセンスは州ごとに独立して管理されています。
代表的なのが「Money Transmitter License(MTL)」で、送金・決済代行・プリペイド発行などを行う事業者に求められます。
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各州の金融当局に個別申請が必要
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取得までに半年〜1年以上かかることも多い
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資本金要件・保証金・内部監査体制の整備が必須
特にニューヨーク州のBitLicenseは有名で、暗号資産関連サービスを提供する場合は独自の登録が求められます。
一方で近年は、複数州に共通する申請プロセスを整備する「MSBネットワーク」構想も進んでおり、州間の重複審査を緩和する動きも出ています。
EU:共通ライセンス制度の整備
ヨーロッパでは、EU加盟国間で統一的な決済ルールが整備されています。
中核となるのが「PSD2(Payment Services Directive 2)」と呼ばれる指令で、EU内の全加盟国に共通する決済事業者の基準を定めています。
PSD2の下では、以下のような事業者ライセンスが存在します。
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Payment Institution(決済機関):送金・決済代行を行う企業
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Electronic Money Institution(電子マネー機関):プリペイド・電子通貨を発行する企業
いずれも加盟国の金融当局に登録し、取得後は**「パスポーティング制度」**により他のEU加盟国でも業務が可能です。
この制度によって、ライセンスを1カ国で取得すれば、EU全体でサービス展開ができる利便性があります。
アジア:国ごとに異なる規制構造
アジア地域は、金融インフラ・法制度の成熟度に大きな差があります。
そのため、国ごとに異なる枠組みで決済業者を規制しています。
| 国・地域 | 主なライセンス制度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本 | 資金決済法に基づく資金移動業登録 | 利用者保護・信託保全が厳格 |
| シンガポール | Payment Services Act (PSA) | 1つのライセンスで多機能決済を包括的に管理 |
| 香港 | Stored Value Facilities (SVF) ライセンス | プリペイドや電子マネー発行に特化 |
| インドネシア | BI Regulation 22/23/PBI/2020 | 外資規制が厳しく、現地パートナー必須 |
| 中国 | 支払業務許可証(PBOC管轄) | 取得難易度が高く、外資への参入制限あり |
特にシンガポールのPSAは、暗号資産取引・電子マネー・送金・為替・決済代行などを一元的に管理する制度として注目されています。
金融技術の発展に柔軟に対応しており、アジアのフィンテック拠点として世界中の企業が進出しています。
国際展開時の注意点
海外で決済サービスを提供する際には、次のポイントを押さえることが重要です。
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現地法に基づくライセンスを必ず確認すること
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ローカルパートナーを活用し、現地審査をスムーズに進めること
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AML/KYC(マネーロンダリング防止・顧客確認)対応を徹底すること
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クロスボーダー送金時の為替規制に注意すること
これらを怠ると、事業停止命令や罰金などのリスクを負うことになります。
特に暗号資産・ウォレットサービスは、各国の法改正の影響を強く受けるため、常に最新情報の更新が欠かせません。
ライセンス取得を支援する国際決済プロバイダーの役割
Virtus Payment のような国際決済プロバイダーは、単なる決済手段の提供にとどまらず、各国のライセンス制度や法令遵守体制を踏まえた支援を行っています。
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現地法に準拠した決済スキームの構築
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複数通貨・複数決済ルートの最適化
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ハイリスク業種でも利用可能なリスク管理体制
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海外ライセンス登録済みのパートナーとの連携
これにより、企業は自社で複雑な法務・審査手続きを行うことなく、国際的な決済環境をスムーズに整備できます。
まとめ
グローバル化が進む中、決済ライセンスは「国ごとに異なる複雑なハードル」から「地域全体を管理する統合枠組み」へと変化しています。米国では州単位の管理、EUでは共通指令による統一、アジアでは多層的な制度が併存する状況です。海外進出を検討する企業にとって、これらの制度を理解し、適切なライセンスの下で事業を展開することは信頼性確保の第一歩です。Virtus Paymentは、こうした国際決済ライセンスの違いを踏まえ、ハイリスク業種やクロスボーダー取引でも安全に利用できる仕組みを提供しています。

