金融全般

「1,000円~数十万円」を貸し出す小口資金の融資は何がよいのか?

数十万円といった少額のお金を貸す小口資金融資がじわりと広がっています。

フリマアプリのメルカリのグループ会社が消費者金融事業に乗り出し1,000円からお金を貸します。また、政府や自治体が生活支援や事業者支援で小口資金融資を行っています。

あえて少額のお金を貸して借りる意義を考えてみました。

メルペイが小口で消費者金融事業を拡大

フリマアプリのメルカリを運営する株式会社メルカリには、株式会社メルペイというグループ会社があります。株式会社メルペイは、スマホ決済サービスのメルペイを運営しています。

このメルペイが2021年8月、消費者金融事業を拡大し、メルカリ・ユーザーが1,000~20万円を借りることができる「メルペイスマートマネー」を始めました(※1)。

まず、この概要からみていきましょう。

※1:https://jp.merpay.com/news/2021/08/merpaysmartmoney/

メルペイスマートマネーの概要

メルペイスマートマネーで借りることができるのは、スマホアプリ・メルカリのユーザーです。メルペイスマートマネーで借りることができる上限金額はユーザーごとに異なり、メルカリの利用実績によって決まります。

つまり、メルカリの利用実績が少ないと借りられる額は1,000円に近くなり、ヘビーユーザーは20万円に近い金額を借りられます。金利もユーザーごとに異なり、利用実績が多い人ほど金利が安くなります。

金利は年率3~15%で、これは大体、大手消費者金融よりやや低いレベルです。

メルペイスマートマネーの最大の特徴は返済方法で、借りたお金は、メルカリ・ポイントや、メルカリで物品を売った売上高で返済できます。つまり間接的にではありますが、自分の身の回り物で借金を返済できるわけです。

毎回審査を受ける

消費者金融からお金を借りるには、返済能力に関する審査を受ける必要がありますが、これはメルペイスマートマネーでも同じです。
ただメルペイスマートマネーでは、毎回審査を受けることになります。

メルペイスマートマネーには限度額の仕組みがなく、例えば2万円借りるための審査に合格して実際に2万円を借りても、またお金を借りたいときは、また審査を受けなければなりません。

ただこの審査は「普通であれば」難しいことはなく、メルカリの利用実績や、メルペイスマートマネーの返済実績などで行なわれます。

一般的な消費者金融のなかには、最初に借りることができる利用限度額が設定され、その審査が通れば利用限度額に達するまで何回でも借りることができます。例えば、限度額100万円の審査が通って実際に10万円借りたら、次に10万円借りるときは審査は行なわれません。

メルペイには、今回始めた「メルペイスマートマネー」以外に「メルペイスマート払い」という小口資金融資があり、こちらは利用限度額が設定されるタイプです。

小口資金融資を始めた狙い

メルペイは、メルペイスマートマネーで小口資金融資を始めた狙いについて次のように述べています(※1)。

<メルペイスマートマネーを導入した狙い>

●メルペイスマートマネーを含むスマホ金融は、自己啓発や自己投資の費用をまかなうために使われることが多い。そこでメルペイスマートマネーでは、学習やスキルアップに使うお金のニーズに応えていく。

●クレジットカードのキャッシングや銀行ローンにおいて、「個人の属性情報」で与信が受けられなかった人(審査が通らなかった人)に対し、「メルカリの実績」という新たな与信基準で審査できるようにした。

自己啓発や自己投資の費用が、何百万円になることはありません。つまり、小口資金で十分まかなえるわけです。

しかし、従来型の融資では、小口資金を借りるときでも、多額のお金を借りるときと同じ審査が行われています。そこでメルペイは、「小口資金の融資であれば審査は緩くてよい」と考え審査を緩くしたメルペイスマートマネーを導入しました。小口資金融資なら焦げつき(返済不能)リスクが低くなるので、審査を緩くするのは合理的です。

貸す側のメリットも大きい

小口資金融資を行っているのはメルペイだけではありません。銀行や消費者金融もこの分野に力を入れています。例えば、メガバンクのみずほ銀行も、「わたし応援ローン」という融資をしていて、なんと1円から借りることもできます(※2)。

メルペイや銀行や消費者金融が小口資金融資を行うのは、手元に現金を持っておきたくないからでしょう。現金を持っていても金利がほとんどつかないからです。

例えば民間の銀行(つまり一般銀行)は一定額を日本銀行(日本の中央銀行)に預けていますが、この当座預金の金利は現在マイナスです。一般銀行が日本銀行にお金を預けていると、金利がつくどころか、金利を日本銀行に支払わなければなりません(※3)。

日本銀行のマイナス金利政策を受けて、一般銀行の預金金利もかなり低くなっています。例えば、三菱UFJ銀行の普通預金の金利は年率0.001%でしかありません。個人が銀行に100万円を預金していても、年10円の金利しかつきません。

そうであるならば、手元の現金を誰かに貸して金利を得たほうがよい、と判断するのは当然です。メルペイスマートマネーの金利は年率3~15%なので、メルペイが、現金を銀行に預けて年率0.001%の金利を受け取るより、メルカリ・ユーザーにお金を貸して年率3~15%の金利を受け取ったほうがよい、と考えるのは合理的です。

同様に銀行も、日本銀行に預けるより消費者に貸したほうがよい、と判断するわけです。

※2:https://www.mizuhobank.co.jp/loan/mywing/service/ouen/index.html
※3:https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b37.htm/

借金の鉄則:返せるお金だけ貸す・借りる

小口資金融資のメリットは、借りるほうにもあります。

借金の鉄則は、「返せるお金だけ貸す」「返せるお金だけ借りる」です。銀行には、貸さない親切、という言葉があるくらいです。お金を必要としている企業や人は強く「貸して欲しい」と思うわけですが、それでもし借りることができたものの返済できなくなってしまえば、傷口を広げることになります。

返済できない企業や人に多額のお金を貸すことは、その企業や人をさらに不幸にさせる可能性があり、これが借金の恐さです。

小口資金融資は、貸すリスクが小さいので貸す側(メルペイや銀行など)の自己防衛になる一方で、借りるリスクも小さくなるので借りる側を守ることができます。

厚生労働省の緊急小口資金とは

民間企業の小口資金融資とはまったく別の目的で、政府も小口資金融資を行っています。

その1つに、厚生労働省が行っている、コロナ対策の生活福祉資金の特例貸付・緊急小口資金があります(※4)。これは時限的な制度ですが、「政府は緊急時にこういうこともする」という例として紹介します。

緊急小口資金(融資)の対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響で休業などを余儀なくされて収入が減り、生計を維持するための緊急かつ一時的なお金が必要な人です。貸付上限額は20万円です。

返済方法は、1年以内据え置きで、2年以内に返済します。例えば2021年10月にお金を借りたら、2022年9月まで返済が猶予され(据え置かれ)、2022年10月から返済を開始して、2024年9月までに完済することになります。

もちろん据え置きをせずに返済することもできますし、2年以内に完済することもできます。利子はなく、保証人も要りません。申し込みは、住んでいる地域の市町村社会福祉協議会で行います。

※4:https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/index.html

自治体などによる中小企業への小口資金融資の概要

自治体のなかには、地元企業の運転資金向けの小口資金融資制度を設けているところもあります。例えば飯能市(埼玉県)の中小企業小口資金融資は次のような内容になっています(※5)。

●対象は市内の中小企業
●融資した資金の使い道:運転資金や設備資金
●貸付限度額:1,250万円
●金利:年率1.2%
●返済方法:1年据え置き、10年または12年以内
●保証人:法人は代表者、個人は不要
●担保:必要な場合と必要でない場合がある
●信用保証料:必要だが、完済した場合、市が負担する

「小口」といっても中小企業の運転資金や設備資金になるので「千万円」単位になっています。年率1.2%は経営者には魅力的なはずです。

この小口資金融資は、地元の金融機関が行い、埼玉県保証協会が公的な保証人になります。そして飯能市が、小口資金融資をする金融機関に、融資原資の一部を預け入れます。市のサポートがあるので、金融機関は低利で中小企業にお金を貸すことができます。

また、地方によっては地元の商工会議所が小口資金融資を行っていることがあります。

※5:https://as-hanno.s3.amazonaws.com/at/1992427db95b3.pdf

まとめ~少ないお金の貸し借りはメリットが大きい?

ビジネスは小さく生んで大きく育てるのが鉄則とされています。また、借金は原則、しないほうがよいといえます。そういった意味では、小口資金融資は借金のリスクを小さくできるので、貸す側にも借りる側にもメリットがある仕組みといえます。

借金をしないほうがよいのは、返済するときに利子がつくからです。したがって、借りたお金で大きな利益を生むことができ、利子の支払いを問題なく行えるのであれば「借りたほうがよい」と判断できます。

小口資金融資は賢く借りる方法といえるでしょう。