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531兆円も持っている投資顧問会社の実態。そのお金で何をしているのか?

慎ましやかな生活を送っていると「お金はあるところにはあるものだ」と感じるものです。しかし投資顧問会社が持っている額は、その印象をはるかに超えるものでしょう。

日本の投資顧問会社各社が持っているお金を集めると531兆円にもなります(※1)。

トヨタ自動車の時価総額が34兆円くらい、日本の国家予算が100兆円くらいと聞けば、その規模が想像できるでしょうか。

投資顧問会社は、投資家からお金を集めて投資、運用をしてお金を増やす仕事をしています。

投資顧問会社になぜ、それほど巨額のマネーが流入するのでしょうか。そして投資顧問会社は、金融や経済のなかでどのような働きをしているののか?

※1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB158IC0V10C22A3000000/

投資顧問業という仕事をする会社

日本投資顧問業協会によると、日本のすべての投資顧問会社の契約資産残高が2021年12月に531兆円2,128億円となり、過去最高を更新しました(※1)。

資産残高とは企業などが保有する現金、預貯金、株式、国債、社債、投資信託、現物などの資産の総額のことですので、投資顧問会社が今531兆円分の現金、預貯金、株式、国債などを持っていることになります。

投資顧問会社は投資顧問業という仕事をしているので巨額の資産を持つことができています。

投資運用業とは

投資顧問業の具体的な仕事の内容は、金融商品取引法で1)投資運用業と2)投資助言業・代理業の 2つと定められています。まず、投資運用業について解説します。

投資運用業には投資一任業務とファンド運用業務の2つがあります。

<投資顧問会社の仕事>

投資顧問業1)投資運用業投資一任業務
ファンド運用業務
2)投資助言業・代理業

投資一任業務は、投資家から資金を預かって株式や債券などの有価証券や不動産などを買い、それを運用する仕事です。

投資家には、生命保険会社や国民年金基金などがありこれらを機関投資家といいます。機関投資家自身も投資をしますが、それだけではリスクがあるので、自分たちのお金の一部を投資顧問会社に与えて投資をしてもらいます。

ファンド運用業務も投資家に資金を提供してもらって投資、運用する点は投資一任業務と同じですがファンド(投資信託)を組む点が異なります。

「ファンドを組む」とは「○○に投資をするので資金提供をお願いします」と宣言するようなものです。例えば、ベンチャー企業を支援するファンドや、企業再生を目的にするファンドなどがあります。

ファンドは金融商品であり、機関投資家だけでなく一般の人である個人投資家も買うことができます。

投資一任業務もファンド運用業務も、投資家からお金を預かって投資、運用をして増やしてから、預かったお金に利益の一部をのせて投資家に戻します。投資・運用であげた利益から投資家に戻す利益の一部を除いたものが投資顧問会社の利益になります。

  • 投資家のお金+運用利益=投資家のお金+投資家への利益+投資運用会社の利益

そして、投資一任業務もファンド運用業務も、投資に失敗すると預かったお金が減ることがあります。理論上は預かったお金が0円になることも起こりえます。

  • 投資家のお金-投資家のお金と同額の損失=0円=投資家は投資したお金を失う+投資運用会社は利益0円(ただ働き)

投資助言業とは代理業とは

投資助言業は、投資顧問会社が顧客に投資の助言を行う仕事です。例えば「この株式を買ってみてはいかがでしょうか」とアドバイスします。

投資運用業と異なるのは、投資顧問会社が投資、運用するわけではない点です。代理業は、投資家の契約締結の代理をする仕事です。

仕事をするには登録が必要「こんなにある投資顧問会社」

投資顧問業(投資運用業と投資助言業・代理業)の仕事は誰でもできるわけではなく、この仕事をするには内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。

投資顧問会社のほとんどは日本投資顧問業協会の会員になっていて、次のような企業が会員になっています。

<日本投資顧問業協会の会員=投資顧問会社の例>

  • 信託銀行:三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行など
  • 証券会社:野村証券、大和証券、楽天証券など
  • 外資やローカル:ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、水戸証券、恵比寿キャピタル、京都アセットマネジメントなど
  • 不動産系:森ビル不動産投資顧問、三菱地所投資顧問など

主な信託銀行や証券会社はほぼすべて会員になっています。また、外資もローカル色が強い会社も会員になっています。

さらに、不動産も投資顧問会社の投資対象になるので、不動産大手も投資顧問会社をつくって投資顧問業を展開しています。

ゴールドマンサックスの日本法人をみてみよ~180兆円で何に投資しているのか?

アメリカのゴールドマンサックスの日本法人であり投資顧問会社であるゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(本社・東京都港区、六本木ヒルズ内)の契約資産残高は180兆円にもなります(※2)。

つまり投資家から集めたお金で株式や債券などを購入し(投資、運用し)、その価値が今、180兆円になっているということです。これは日本法人だけの額です。

日本政府の2021年度一般会計が107兆円で、そのうち税金で集めたお金は57兆円です(※3)。つまりゴールドマンサックスの日本法人は政府よりはるかに多くのお金を集めていることになります。

ではゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社は、具体的に何に投資をしているのでしょうか。それは同社が販売している投資信託をみればわかります(※4)。

「GS MLPインフラ関連証券ファンド」はアメリカとカナダのエネルギー企業やインフラ企業の株式に投資しています。

「GS ビッグデータ・ストラテジー(エマージング株)」は、エマージング諸国と呼ばれる新興国や中南米諸国の企業に投資します。

「GS 米国成長株集中投資ファンド」は長期にわたって利益成長が期待できるアメリカ企業の株に投資します。投資先にはグーグルを運営しているアルファベットや、動画配信のネットフリックス、スニーカーのナイキ、半導体のエヌビディアなどがあります。

これらのファンドは誰でも買うことができます。

※2:https://www.gsam.com/content/gsam/jpn/ja/gsitm/about-gsam/assets-under-supervision.html
※3:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page03.htm#:~:text=%E4%B8%80%E8%88%AC%E4%BC%9A%E8%A8%88%20%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%20%E5%9B%BD,%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
※4:https://www.gsam.com/content/gsam/jpn/ja/gsitm/fund-center/fund-finder.html

お金を回して経済を強くしている

投資顧問会社の任務は大きく2つあります。

1つ目の任務は、自分たちに資金を預けてくれた投資家のためにそのお金を増やすことです。

お金には「増えれば増えるほど増える」という性質があります。例えば、購入した株式が2%上昇した場合でも、100万円分しか購入していなければ2万円しか利益が出ませんが、1億円分購入していれば200万円の利益になります。

そのため投資は、投資が上手な人にお金を集めて運用をしてもらったほうが利益をあげやすくなります。

2つ目の任務は経済を強くすることです。

先ほど、ゴールドマンサックスの日本法人が、グーグルやネットフリックスやエネルギー会社や新興国企業に投資をしている、と紹介しました。

「投資する」とは「お金を与えて事業を拡大してもらって利益をあげてもらってその一部をいただくこと」なので、グーグルやネットフリックスやエネルギー会社や新興国企業は、ゴールドマンサックスや投資家から成長する機会をもらったようなものです。

経済の成長は企業の成長によるところが大きいので、間接的に投資顧問会社の仕事は経済の強化に寄与していることになります。

なぜ過去最高のお金が集まったのか

冒頭で、日本の投資顧問会社の契約資産残高が2021年12月に531兆円2,128億円となり過去最高を更新した、と紹介しました。

「日本の景気はあまりよくない」と感じている人は少なくないと思いますが、なぜ投資顧問会社にはお金が集まるのでしょうか。

日本経済新聞は次の2点をその理由に挙げています(※1)。

  • アメリカ企業の株価が上昇した
  • 脱コロナ観測が広がって投資意欲が増進した

日本の投資顧問会社もアメリカ企業の株式に投資するファンド(投資信託)をたくさんつくっています。したがって日本人も気軽にアメリカ投資をすることができるようになっています。ファンドを通じてアメリカの好景気の恩恵を日本人でも受けられるようになっているのです。

そして新型コロナ禍によって打撃を受けた経済が、脱コロナ観測によって上向く可能性が高まり始めました。落ち込んでから上昇するときこそ投資チャンスになるので、その機を逃したくないと考える人が増えたのでしょう。

まとめ:今からでも儲かるのか

投資顧問会社が販売しているファンド(投資信託)は、個人でも10,000円からでも買うことができます。ファンドを買うことで投資したことになり、その人は個人投資家になります。

投資顧問会社の契約資産残高が過去最高を記録した、ということは、投資チャンスが過去最大になったと理解することもできます。このように聞くと「投資するなら今」と思ったり「今から買っても儲かるのか」と考えたりするでしょう。

しかし投資にはリスクがあるので注意してください。

「今から投資を始めても儲かるのか」という質問の答えは2つしかありません。「儲かる」か「損する」かです。

そして「儲かる」か「損する」かは今に限った話ではなく、過去もそうでしたし、未来もそうでしょう。投資チャンスを逃さないことは重要ですが、雰囲気に流されることなく自分の目でリスクの大きさを測ってください。