増え続ける新しい銀行…名前は知っているけどサービス内容ってご存じ?
最近、よく知っている名前だけど、どのようなサービスを提供しているのかわからない銀行が増えたと感じませんか。例えば、セブン銀行、ソニー銀行、楽天銀行などです。
セブンイレブン、ソニー、楽天はよく知っていると思いますが、それらのグループ企業である銀行の正体はよくわかりません。
このような銀行は、メガバンクや地方銀行と何が違うのでしょうか。新しい銀行たちの特徴を紹介します。
「その他の銀行」とは
銀行は、金融庁から銀行免許の発行を受けないと銀行業をすることができません。
金融庁は銀行を、1)三菱UFJ銀行などの都市銀行、2)三井住友信託銀行などの信託銀行、3)JPモルガン・チェース銀行支店などの外国銀行支店、4)北海道銀行などの地方銀行、5)栃木銀行などの第2地方銀行、6)その他の銀行――の6種類にわけています(※1)。
その他の銀行は次の17行になります。
株式会社あおぞら銀行
株式会社イオン銀行
株式会社SBJ銀行
auじぶん銀行株式会社
GMOあおぞらネット銀行株式会社
PayPay銀行株式会社
株式会社新生銀行
住信SBIネット銀行株式会社
株式会社整理回収機構
株式会社セブン銀行
ソニー銀行株式会社
株式会社大和ネクスト銀行
株式会社みんなの銀行
楽天銀行株式会社
株式会社ローソン銀行
株式会社ゆうちょ銀行
株式会社UI銀行
この記事ではその他の銀行のうち、普段の生活でよく目にする「セブン、ローソン、イオン、PayPay、楽天、au、ソニー」の名称がついた銀行の特徴を紹介します。
※1:https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/ginkou.pdf
小売企業系:セブン銀行、ローソン銀行、イオン銀行の特徴
小売企業系となるのが、セブン銀行、ローソン銀行、イオン銀行です。各社のPRポイントを紹介します。
セブン銀行のPRポイント
セブン銀行は、利用者には次の4つのメリットがあるとPRしています(※2)。
●メリット1:デビットサービス
キャッシュカードにデビット機能がついているので、現金を持たずに買い物ができ、支払いと同時に銀行口座から代金が引き落とされます。デビット機能を使うと、利用額の0.5%のナナコポイントがたまります。
●メリット2:スマホATM
スマホにMyセブン銀行というアプリをダウンロードすると、スマホだけでATMの入出金ができます。さらにATMを使ったローンの借入れと返済もスマホでできます。
●メリット3:7:00~19:00のATM手数料無料
平日はもちろんのこと土日祝日も7:00~19:00はATMを無料で使うことができます。
●メリット4:ATMがセブンイレブンにあって24時間365日使える
セブン銀行は26,000台以上のATMを保有し、それらのほとんどは全国のセブンイレブンに配置されています。24時間365日営業のセブンイレブンのATMであれば、24時間365日使うことができます。
※2:https://www.sevenbank.co.jp/personal/account/#anc_merit
ローソン銀行のPRポイント
ローソン銀行は法人が利用したときの利便性をPRしています(※3)。
「金庫がわりクン」は、企業などの法人に入金専用カードを発行し、ローソン銀行のATMを自社の金庫のように使ってもらうサービスです。
多くの企業は「売上現金の保管の問題」「夜間金庫の利用料が高い」「銀行窓口の混雑」「売上管理の面倒さ」といったお金に関する課題を抱えています。
「金庫がわりクン」を使えば、コンビニ・ローソンのATMに24時間365日いつでも入金でき、複数の支店や営業所の売上金を1つの口座にまとめることができます。しかも口座維持手数料もネットバンキング月額利用料も無料です。
入金手数料は、1回330円(税込、以下同)、または1日440円、月11,000円です。
※3:https://www.lawsonbank.jp/lp/atm_payment/
イオン銀行のPRポイント
イオン銀行はローンを充実させていて、住宅ローン、カードローン、フリーローン、目的型ローン、自動車ローン、教育ローンがあります(※4)。
そして外貨普通預金という資産形成に使えるサービスも提供しています(※5)。自分が持っている円を、例えばアメリカドルに換えて預金することができます。イオン銀行のアメリカドルの普通預金積立の金利は0.100%で、円の普通預金の金利は0.001%なので、円で預金しておくより多くの利子がつきます。
また、預金したアメリカドルを円で引き出すときに、預金したときより円安になっていると金利とは別に利益が発生します。
例えば、1ドル100円のときに1ドル預金して、その後円安が進んで1ドル110円になったときに1ドルを引き出すと110円を手に入れることができます。つまりドル投資ができるので、資産形成に使えるわけです。
ただこの計算には手数料が含まれていません。そして、引き出すときに、預金したときより円高になっていると損が生じます。資産形成は投資なので、必ずリスクが伴います。
※4:https://www.aeonbank.co.jp/
※5:https://www.aeonbank.co.jp/foreign_deposit/ordinary_deposit/
ネット企業系:PayPay銀行、楽天銀行の特徴
PayPay銀行の大株主は、Zフィナンシャル株式会社(持ち株比率46.57%)と三井住友銀行(同46.57%)です(※6)。そしてZフィナンシャル株式会社は、Zホールディングスの100%子会社です。Zホールディングスの傘下にはヤフーやLINEがあるので、PayPay銀行はネット企業系といえます。
楽天銀行は楽天カードの100%子会社で、楽天カードはネット通販大手、楽天市場を傘下に持つ楽天グループ株式会社の100%子会社なので、やはりネット企業系といえます(※7)。
それぞれのPRポイントをみていきましょう。
※6:https://www.paypay-bank.co.jp/company/index.html
※7:https://www.rakuten-bank.co.jp/company/profile/outline.html
PayPay銀行のPRポイント
PayPay銀行は「PayPayを一番お得に使える銀行」であることをPRしています(※8)。PayPayはご存知のとおりスマホ決済サービスです。
PayPay銀行の口座を持っているとPayPayの残高への入出金の手数料が何回でも0円になります。これは口座保有者限定の特典です。PayPayのヘビーユーザーなら、PayPay銀行口座を持っておきたいところです。
またATM手数料は、月1回は無料、そして3万円以上の利用なら何回でも無料です。しかもこの無料サービスは、セブン銀行、イオン銀行、ローソン銀行、三井住友銀行、ゆうちょ銀行のATMの利用でも適用されます(※9)。
PayPayの利用拡大は、セブンイレブンやローソンにとってもメリットがあるので、セブン銀行やローソン銀行も協力しているのでしょう。
※8:https://www.paypay-bank.co.jp/
※9:https://www.paypay-bank.co.jp/
楽天銀行のPRポイント
楽天銀行は次の6つのメリットがあるとPRしています(※10)。
●メリット1:コンビニATMで24時間365日利用できる
●メリット2:ATM手数料が最大月7回まで無料
●メリット3:他の銀行への振り込み手数料が最大月3回まで無料
●メリット4:楽天ポイントが貯まる
●メリット5:スマホ・サービスが充実
●メリット6:楽天証券と連携させると普通預金の金利を0.1%に優遇する
注目したいのは、楽天ポイントや楽天証券との連動です。
楽天グループは、インターネットショッピングモール(楽天市場)、フリーマーケット、ネットスーパー、ポイント、旅行業、カード、証券、スマホ決済、スマホ、保険、損保、不動産などさまざまな事業を展開していて、それは楽天経済圏と呼ばれるほど拡大しています。
楽天経済圏のなかに入っている人や、楽天グループのサービスを多用している人ならば、楽天銀行にも口座を持っておいたほうがよいかもしれません。
※10:https://www.rakuten-bank.co.jp/merit/
※11:https://www.rakuten.co.jp/sitemap/
携帯会社系:auじぶん銀行の特徴
携帯会社系の銀行としてauじぶん銀行を紹介しますが、その前に「注釈」があります。
日本の携帯大手(キャリア)にはau、ドコモ、ソフトバンク、楽天の4社があり、純粋な携帯会社系銀行はauじぶん銀行だけです。
ソフトバンク株式会社はソフトバンクグループ株式会社のグループであり、同グループにはPayPay銀行がありますが、こちらは先ほどネット企業系銀行として紹介しました。楽天の楽天銀行も、ネット企業系銀行として紹介済みです。
ドコモは銀行を持ちませんが、三菱UJF銀行とデジタル金融サービスの分野で提携しています(※12)。ただ「ドコモ銀行」誕生の噂は出ています(※13)。
さて、そのauじぶん銀行ですが、公式サイトで「KDDIと三菱UFJ銀行が共同出資して設立された」とPRしています(※14)。キャッチフレーズは「いつでもどこでも銀行になる」「銀行を連れて生きていこう」です。
これは、KDDIのスマホ(au)を持ち運ぶように銀行サービスを持ち運ぼう、というコンセプトのようです。
auじぶん銀行の主なサービスは次のとおりです。
●スマホ決済
●スマホデビット
●円普通預金
●円定期預金
●外貨預金
●カードローン
●住宅ローン
●じぶん銀行toto
●公営競技(競馬、ボートレース、競輪、オートレース)
これらのサービスを、ほぼスマホだけで完結できることを強みにしています。
※12:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2021/05/11_01.html
※13:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01895/122300003/
※14:https://www.jibunbank.co.jp/about/?cid=gnv01
意外な業界系:ソニー銀行の特徴
ソニーは今や家電企業とは呼びづらく、ゲームも映画も音楽も手がけ、そして電気自動車すらつくっています。その多角化の一環として銀行業も始めました。
ソニー銀行が公式サイトで紹介している商品・サービスは以下のとおりです(※15)。
●デビットカード
●クレジットカード
●円預金
●外貨預金
●FX(外国為替証拠金取引)
●クラウドファンディング(ソニーバンクゲート)
●投資信託、NISA
●ローン(住宅、カード、目的別)
その他
これだけをみると「ソニーっぽさ」を感じられません。
セブン銀行はセブンイレブンとの関係を強調し、auじぶん銀行はスマホとの連動を強調していますが、ソニー銀行はプレイステーションやスパイダーマンとのコラボ企画を行っているわけではありません。
ではソニー銀行の特徴は何かというと、ソニーフィナンシャルグループ株式会社の100%子会社であるところでしょう(※16)。ソニーフィナンシャルグループの傘下にはソニー銀行の他に、ソニー生命やソニー損保などがあります。
銀行と証券が1つのグループにあることは珍しくありませんが、銀行と保険が1つのグループに入っているのはまれです。
※15:https://moneykit.net/
※16:https://sonybank.net/corporate/info.html
まとめ~メリットを「つまみ食い」できる
新しい銀行は既存の銀行との違いをPRしたいところですが、銀行事業は金融庁などの規制が厳しいので、なかなか派手な事業やキャンペーンを打ち出すことができません。
そのため新しい銀行は、グループの知名度を使ったり、系列企業のサービスに便乗したりして独自色を出そうとしています。消費者からするとどれも決定打に乏しく、「どうしてもここでなければ駄目」と感じられないかもしれません。
しかし、企業数が多い業界ではサービス競争が過熱し、銀行業界は今まさにその状態にあります。それぞれの銀行のメリットを少しずつ「つまみ食い」してみてはいかがでしょうか。