金融全般

フィンテック(Fintech)の現状は?金融ロボットによるメリットや問題点

金融にテクノロジーを導入したり、テクノロジーで金融業界を変革したりする「フィンテック」が注目され始めてからだいぶ月日が経ちました。ただ、一般の生活者が普通に生活していて「劇的に変わった」と感じることは少ないのではないでしょうか?

しかし、フィンテックは日本や世界の金融業界に深く根を張り、確実に世の中を便利にしています。

そこでこの記事では、フィンテックが「お金のインフラ」をどのように変えたのかを解説したうえで、フィンテックの問題点を確認します。

ロボットが資産運用をするロボットアドバイザーとは

”いかにもフィンテックらしい”といえる変化の1つに、ロボットによる資産運用サポートがあります。その名もロボットアドバイザー、通称ロボアドです。

AIが投資判断をしてプラス11.1%を実現

日本経済新聞が注目したフィンテックの1つに、2015年設立のITベンチャー、株式会社フォリオ(本社・東京都千代田区)のロボアド「ロボプロ」があります(※1、2)。

ロボプロは、AI(人工知能)で株式相場などの動きを予想し、投資家へ利益が生まれる可能性の高い銘柄などを教えます。

フォリオは、2020年1月15日から同年8月31日までのロボプロのグローバル投資のパフォーマンスが11.1%のプラスになったと公表しています。ロボプロのパフォーマンス実績が11.1%のプラスであったことを知らせるフォリオの公式サイト(※3)。

ロボプロの実績

画像引用:https://folio-sec.com/robopro

もし、100万円の資金を使って、ロボプロが提案するとおりに投資をしていたら、約8カ月後に111万円になっていたことになります。これはかなり魅力的な成績といえます。

ロボプロの投資対象は、アメリカ株、そのほかの先進国株、新興国株、アメリカ国債、金などとなっています。

AIは40の指標を眠らず見続け記憶し続ける

ロボプロのAIは、世界各国の株式、債券、通貨(為替)、原油、銅などの40以上の相場をウォッチして、投資提案をします。この投資提案の手法は、ファンドマネジャーや市場アナリストと同じですが、ウォッチするデータ量はけた違いです。

AIは搭載したコンピュータは疲れ知らずなので、40以上の相場を24時間365日観察し続けることができます。しかも、AIは忘れません。つまり、40の指標から投資提案をする場合、必ず40の指標を考察したうえで判断を下します。

ただ、フォリオはロボプロの判断を信じたことによって損失が生じることがあり、また、プラス11.1%の結果が将来も再現できる保証はない、としている点には注意してください。

(※1)証券フィンテック、裏方に活路 個人向けは苦戦で再編も
(※2)会社概要 | 株式会社FOLIO
(※3)FOLIO ROBO PRO(ロボプロ)

スマホで簡単に株式投資できる

フィンテックのメリットを実感できるのが、スマホのみを使った株式投資でしょう。

株式投資はインターネット証券の出現により、証券会社の営業担当者に買い注文や売り注文を出さなくても、売買できるようになりました。これも一種のフィンテックですが、スマホ株式投資はこれをさらに進化させたフィンテックといえます。

日本で最も利用者の多いLINEも進出

皆さんもよくご存じのLINEが、スマホ株式投資に進出しています(※4)。このLINE証券の特徴は、1株数百円から投資できることです。

一般的な株式投資の場合、株式を買うときは最低でも「1単元」分を買わなければなりません。例えば、トヨタ自動車の1単元は100株です。トヨタ自動車の株価は大体1株6,000~8,000円くらいなので、トヨタ自動車株を買う場合、最低でも60万~80万円を投じなければなりません。これだと投資に参加できる人が限定されます。

しかし、LINE証券を使えばスマホを操作するだけで「数百円分のトヨタ自動車株」を買うことができます。

これが実現できたのは、IT、インターネット、クラウド、スマホアプリなどの技術を駆使して、かなり詳細に大量のデータ管理ができるようになったからです。

コストパフォーマンスも高い

そして、LINE証券では株式を買うときの手数料を0円にしています。そのほかのインターネット証券は株式を買うときの手数料を有料にしています。

ただ、保有している株式を売却するときの手数料は、そのほかのインターネット証券のほうがLINE証券より安い場合があります(※4)。

LINE証券などのスマホ株式投資の利用料が格安なのは、フィンテックのシステムの運用コストが安く済むからです。
手数料が格安であることと、超低額投資が可能であること、そしてスマホだけで操作が完結することは、投資に興味があるもののなかなか最初の一歩が踏み出せなかった人にとって、大きなメリットに映るでしょう。

(※4)LINE証券公式ページ

国はフィンテックをどうみているのか?問題点は?

日本政府は、フィンテックの流れについて原則歓迎しています。金融庁は2019年に「フィンテック・イノベーション・ハブ活動報告」を公表し、そのなかで次のように述べています(※6)。

  • フィンテックにより金融サービスが動的に変化していくなか、イノベーションの動きを促進していくことが重要。
  • フィンテックについての最新トレンドや状況を把握し、今後の金融行政にも役立てていく

ただ、フィンテックは「新しい便利ツール」であるだけに、利用の仕方において課題が浮き彫りになっています。

アメリカで2021年1月に発生したゲームストップ株の乱高下問題は、インターネットの掲示板を閲覧した多数の個人投資家たちが共闘して、市場を一次混乱に陥れました(※7)。ここで使われたのが、スマホ証券のサービスでした。

掲示板で呼び掛けただけで、すぐに多数の人が同じ行動を一斉に起こすことができたのは、フィンテックの力があったからです。このように、過剰な利便性は諸刃の剣になりかねません。

(※6)Fintech Innovation Hub 活動報告
(※7)ゲームストップ株乱高下、米司法省が不正調査 米報道

まとめ~賢く注意深く使うことが求められる

「諸刃の剣」と紹介しましたが、フィンテックはまさに刃物です。

料理包丁や工作するときのカッターナイフでも、刃物は日常生活になくてはならない道具です。しかし、ほんのちょっと手を滑らしただけでケガをします。

フィンテックも同様。その便利さから二度とフィンテックなしの金融には戻れないでしょうが、便利になるほど使用頻度が高くなるので、間違って使ったときの「しっぺ返し」の被害は甚大になります。

以上のことから、フィンテックは賢く注意深く使うことが求められます。