ビットコインなどの「暗号資産(仮想通貨)」とは何か【金融基礎知識】
ビットコインなどはかつて仮想通貨と呼ばれていましたが、今は暗号資産と呼ばれています。暗号資産とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値と定義されています。
この記事では暗号資産の基礎知識を紹介するので、最後まで読んでいただければ、なぜビットコインが世界的に注目されているのかがわかりはずです。
ビットコインはなぜ暗号資産なのか?
日本銀行は暗号資産について次のように定義しています(※1)。
- インターネット上でやり取りできる財産的価値を持つ
- 不特定多数の人に対して代金を支払うときに使える
- 日本円やアメリカドルなどの法定通貨と交換できる
- 電子的に記録され移転ができる
- 法定通貨ではない
- プリペイドカードのような「法定通貨建ての資産」ではない
この6条件に合致したものを暗号資産と呼びます。そして日銀は、代表的な暗号資産としてビットコインとイーサリアムを挙げています。
ここでは、最も有名なビットコインにフォーカスを当ててみましょう。ビットコインはなぜ、暗号資産といえるのでしょうか。
(※1)https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c27.htm/
ビットコインは6条件に合致する
ビットコインといえば「B」に縦線が入った図柄を描いたコインが有名ですが、それはあくまでイメージです。ビットコインでのお金はコンピュータ内のデータであり、硬貨や紙幣といった物理的な物体は使いません。
暗号資産以外でも、データをお金のように使うことはできます。例えば、ネットゲームの課金の仕組みは、「ゲームを楽しむ体験」と「お金」を交換していて、両者を介しているのは「ゲームをプレイしたデータ」になります。
したがって「ゲームをプレイしたデータ」は、暗号資産の条件の1つである「●インターネット上でやり取りできる財産的価値を持つ」ことに該当します。
しかし、もう1つの暗号資産の条件である「●不特定多数の人に対して代金を支払うときに使える」わけではないので、「ゲームをプレイしたデータ」は暗号資産とはいえません。
一方でビットコインのデータは、円やドルと交換できます。そして、ビットコインのデータはインターネット上でやり取りできます。
以上のことからビットコインは、暗号資産の次の条件を満たします。
- インターネット上でやり取りできる財産的価値を持つ
- 不特定多数の人に対して代金を支払うときに使える
- 日本円やアメリカドルなどの法定通貨と交換できる
- 電子的に記録され移転ができる
ビットコインはさらに「●法定通貨ではない」も「●プリペイドカードのような『法定通貨建ての資産』ではない」もクリアします。したがってビットコインは暗号資産といえます。
中央の管理者や中央銀行がないから価値が変動する
ビットコインには、中央の管理者がいないという特徴があります。
日本円は日本銀行が中央の管理者になっていて、アメリカドルはアメリカ連邦準備理事会(FRB)が中央の管理者になっています。日本銀行やFRBなどのことを中央銀行いい、中央銀行は自国の通貨の価値と金融システムを管理しています。ビットコインは中央の管理者がいないだけでなく、中央銀行も関与しません。
中央銀行が関与しないという特徴があるために、暗号資産は電子マネーと区別されます。電子マネーは円と1対1の関係にあります。電子マネーで1ポイント1円と決めたら、必ず1ポイントは1円の価値を持ちます。
「1ポイント=1円」が変動しないのは、電子マネーはお金の支払い方(決済方法)を工夫しているだけで、お金の価値を調整しないからです。
しかし暗号資産では、暗号資産の1単位が1円の価値を持つこともあれば、2円の価値になることも0.5円の価値になることもあります。暗号資産の1単位の価値が変動するのは、中央銀行の介入を受けずに価値を変動させることができるからです。
ビットコインの単位は「BTC(ビットコインと読む)」なのですが、1BTCの価値は、1,000円だったこともありますし、600万円になったこともあります。
ビットコインと円を交換する方法
ビットコインを使うには、手持ちの円をビットコインに換える必要があります。また、ビットコインを使っている人でも、そして、いくら「ビットコインにはお金の価値がある」と言われても、いつかは手元のビットコインを円に換えたいと思うでしょう。
ビットコインと円を交換するサービスを提供している業者のことを、暗号資産交換業者といいます。ビットコインを手に入れるのも、ビットコインを円に戻すのも、暗号資産交換業者に依頼することになります。
日本では、暗号資産交換業者は金融庁に登録しなければなりません。誰でもビットコインと円を交換するビジネスを行うことができるわけではありません。この点は、政府が介入しているといえます。
ビットコインは誰が生み出し、誰が管理しているのか?
暗号資産交換業者は、ビットコインと円を交換しているだけで、ビットコインを生み出しているわけでも、ビットコインを管理しているわけでもありません。
ビットコインを生み出すことができるのは、つまり、ビットコインのデータをつくることができるのは、ビットコインが取引されたデータをコンピュータで処理した人です。別の言い方をすると、ビットコインが取引データをコンピュータで処理した人に、新たなビットコインが与えられるわけです。
ビットコインにとってデータは「命」なので、取引データのコンピュータ処理を正確かつ素早く行うことは、ビットコインの生命線ということができます。それで、取引データのコンピュータ処理をしてくれた人に、報酬として新たなビットコインが渡されるわけです。
ビットコインの取引データをコンピュータ処理して新たなビットコインを手にすることを「採掘(マイニング)」といいます。
マイニングは永遠にできるわけではなく、ビットコイン制度では、2140年までに計2,100万BTCしか発行しないことが決められています。ちなみに、1BTCが600万円だとすると、2,100万BTCは126兆円になります。
ビットコインの取引を管理しているのは、インターネットでつながれたコンピュータのネットワークです。ビットコインのすべての取引情報は取引台帳に記録されていて、その取引台帳のデータがコンピュータ・ネットワーク上に存在します。
取引台帳のデータ量は膨大になるので、ブロックという小さな単位に小分けにして保存します。すべてのブロックは鎖(チェーン)のようにつながれていて、1つのブロックで不正に改ざんされたら、ほかのブロック内のデータとの整合性が取れなくなるため、発覚します。
このコンピュータ・システムのことを「ブロックチェーン」といいます。そしてブロックチェーンの仕組みこそ、ビットコインの管理体制ということができます。
暗号資産を使うメリット
ここまでの説明で次のような疑問が湧くと思います。
「なぜ多くの人は、中央銀行の管理下になく、お金としての価値が安定せず、複雑なコンピュータ・システムが必要な暗号資産を積極的に使おうとしているのか」
円やドルでもできることを、なぜわざわざ暗号資産を使って行おうとしているのでしょうか。暗号資産を使うメリットは次の3点に集約されます。
中央銀行や一般の銀行を介さず、個人間でやり取りできる
暗号資産は、個人間でやり取りできます。そこに、中央銀行はもちろんのこと、一般の銀行も介入しません。暗号資産を個人間でやり取りできるのは、データだからです。
手数料が無料、または格安
銀行を介したお金のやり取りは、送金でも引き出しでも手数料が発生します。
しかし暗号資産のやり取りは無料か、手数料が取られることがあっても格安です。暗号資産はデータなので、やり取りに手間がかかりません。また暗号資産のデータのやり取りはインターネット上で行いますが、インターネットの利用は無料です。
暗号資産と比べると、紙(紙幣のこと)と金属(硬貨のこと)を使う現行のお金は使い勝手が悪いといえます。
世界共通
暗号資産は、世界共通です。日本でビットコインを使っても単位はBTCですし、アメリカでもヨーロッパでもBTCを使います。そして日本の1BTCの価値は、アメリカでもヨーロッパでも1BTCです。
一方で円やドルなどの既存の通貨は自国でしか使えず、単位も円、ドル、ポンド、ユーロ、元などとバラバラです。
円やドルなどの通貨を中央銀行が管理するのは、自国の通貨を守るためです。中央銀行は政府から独立していますが、政府と緊密に連携しています。そのため中央銀行と政府は、自国の通貨を有利に運営しようとします。その結果、自国の通貨の価値は、他国の通貨と比較したときに変動します。
暗号資産には国という概念がないので、国の事情によって価値が変わることはありません。
暗号資産を使うデメリット
暗号資産はとても合理的なお金ですが、それでも本格的に普及しないのはデメリットが少なくないからです。
投資対象になってしまい、お金として使いにくい
ビットコインは2012年ごろまで、1BTCが1,000円程度でした。それが2013年4月に1万円を突破して、同年11月には10万円を超えました。その後乱高下を繰り返し、2019年に約150万円に達し、2021年3月30日現在の価値は約650万円になっています。
ビットコインは投資対象になっていて、暴落することも暴騰することもあります。一般の人は危なくて持つことはできないと感じるでしょう。そのためビットコインは、お金として開発されたのに、お金として使うことが困難になりました。
中央銀行や政府の保証がない
暗号資産が中央銀行や政府の介入を受けないことはメリットである一方で、デメリットにもなります。デメリットとは、暗号資産の価値を保証する機関がないことです。中央銀行や政府の保証がないためにビットコインの価値が乱高下するといっても過言ではありません。
ある日突然、全員が「ビットコインを使わない」と決めたら、ビットコインは単なるデータになってしまいます。データが持っていたお金の価値が、一瞬で消える可能性がゼロではないのです。ビットコインの価値を決めているのは、人々の「価値があるか」「価値がないか」という想いです。
ただ、ビットコインを含む一部の暗号資産は、世界中の多くの人が「お金としての価値を持つ」と認めているので簡単に消えることはないでしょう。また、暗号資産の合理性と将来性からすると、その価値はさらに高まるかもしれません。
このように中央銀行や政府の保証がないことにはメリットもありますが、しかし不確実性は、お金としてはデメリットに数えられるでしょう。
まとめ~将来性と投資の兼ね合い
暗号資産は、世界共通のお金という点でも、インターネットとコンピュータを使っているという点でも、将来性のあるお金の仕組みといえます。暗号資産を保有することは、未来を先取りすることでもあります。
ただ暗号資産は投資対象になっているので、注意が必要です。
もちろん、日本人にとっては、ドルやユーロなどの他国の通貨も投資対象なので、円ではないお金であるビットコインに投資することは、投資スタイルとしては普通のことです。
しかし、ビットコインなどは価値の乱高下が激しく、大儲けできる可能性がある代わりに、大損するリスクがあります。暗号通貨を取り扱う場合は、将来性と投資の兼ね合いを考慮したほうがよさそうです。