スマホを使った株式購入は「投資の入口」になるのか?
「株を買いたいけどやり方がわからない。『カブ』ってなんか恐い。そのように感じている人のために少額から始められる株式投資があります」
最近、このようなうたい文句をみかけるような気がしませんか。
株式投資にはリスクがあって、最悪、購入した株式を発行している会社が倒産したら、その株式は無価値になります。つまり投資したお金(株式を買ったお金)が消失します。
しかし、例えば1万円ならどうでしょうか。もちろん1万円であっても消えてなくなったら切ないですが、しかし株式投資にチャレンジしたい人なら「それくらいのリスクで始められるなら」と感じるのではないでしょうか。
そして株式にはリスクだけでなくリターンもあるので、1万円が5千円に変わるかもしれないし、1万円が1万5千円に変わるかもしれません。
インターネットを使った金融システムが進化したことで、スマホだけで株式投資が完結するサービスが増えています。そして、このスマホ投資の多くは少額投資が可能になっています。
政府は懸命に「貯蓄から投資へ」と呼びかけていますが、スマホ投資は投資の入口になるかもしれません。
政府が国民にすすめるのは少額・継続・長期投資
金融庁は公式サイトに「投資の基本」というページを設け、なぜ国民が投資に取り組んだほうがよいのかを説明しています(※1)。
投資が必要なのは、人生には就職、結婚、子供の教育、住宅購入といったイベントがあり、それにはお金が必要で、そのお金は長い期間をかけて少しずつ増やしていかなければならないからです。
この「お金を少しずつ増やしていく」ことこそ、政府が国民に進める投資の形です。財務大臣は次のように述べています(※2)。
我が国におきましても、家計金融資産を貯蓄から投資へシフトさせていくため、家計の幅広い層が将来のライフプランを見据えて、少額ずつでも継続的にかつ長期的に投資をしていく、そのための環境を整え、家計を後押ししていくことが肝要ではないかと、そういうふうに考えます
ここでも「少額ずつ」「継続的に」「長期的に」ということが強調されています。
政府がすすめているのは単なる投資ではなく、少額・継続・長期投資であることがわかります。つまり「1年で1億円儲かる」投資も、「退職金をすべて使い果たす」投資も、推奨していません。
ただ「少額」がいくらなのかは議論の余地があります。資産を10億円持っている人と、預貯金の額が100万円の人では少額の額が違います。
投資は余裕資金のなかでやることが原則なので、「投資したお金が全額消えても家計にまったく影響を与えない」額が少額となるでしょう。
そして少額投資にチャレンジするなら、スマホ株式投資はよいきっかけになるかもしれません。
※2:https://www.fsa.go.jp/common/conference/minister/2022a/20220610-1.html
スマホ投資とは、スマホ画面で買い注文と売り注文を入れること
株式投資とは、株式を買って値上がりするのを待って、値上がりしたときに売却して、買ったときの価格との差額を収入とする投資手法です。
そして、値上がりを期待したのに値下りしてしまい、これ以上待つと損失が増えると判断して売却すると損をします。
株式投資を長く続けていると、「ずっと利益をあげる」ことも「ずっと損する」ことも起きないことがわかります。利益をあげたり損したりしながら、トータルでの利益を目指すのが株式投資です。
この形態はスマホ投資だけでなく、パソコンを使った株式投資でも、証券会社の担当者に売買を指示する方法でも同じです。
スマホ投資は、スマホを使って証券会社のサイトにアクセスして、そのサイトを操作することで新たに株を買ったり、保有株を売却したりします。
スマホで「こんなにたくさん」金融商品を買うことができる
株式投資といった場合、ある企業の株式を売買することをいうのですが、そのほかに投資信託やETFやREITといった金融商品を売買することもできます。これらも「株式のようなもの」であり、スマホ投資で売り買いできます。
それぞれの特徴を紹介します。
●株式とは
株式は企業が発行するもので、スマホ投資を含む株式投資で売買できるのは上場した企業の株式だけです。上場とは、証券取引所から資格を得て、株式市場で(実際は証券取引所内で)株式を売買できる状態にすることです。
例えば、トヨタ自動車株式会社は上場しているのでスマホ投資で売買できますが、近所の「○○株式会社」の株式は上場していなければ売買できません。株式の価格は1日に何度も変動し、リアルタイムで売買できます。
●投資信託とは
投資信託は「複数の株式が混ざっているもの」と考えてよいでしょう。
例えばある投資信託は「トヨタ自動車、東京海上、オリエンタルランド、味の素、任天堂など」の株式で構成されています。このように複数の株式を混ぜておけば、どれかが値下がりしてもどれかが値上がりして、トータルで値上がりを期待することができます。
投資信託に組み入れる株式は、投資のプロが吟味します。そのため、投資初心者が自身の判断で株式を選んで買うより値上がりする確率は高くなる、と期待できますが、しかし必ずしもそうはならないこともあります。
また、投資信託はプロに運用を任せることになるので、売買手数料が株式投資より高くなることがあります。
投資信託の価格は1日に1回決まります。株式や、次に紹介するETFのように1日に何度も価格が変動することはありません。また投資信託の買い注文や売り注文を出したときは価格が決まらず、翌日になってようやく買った価格、または売った価格が確定します。
●ETFとは
ETFはエクスチェンジ・トレイデッド・ファンドの略称で、上場投資信託と訳されます。したがってETFは上場している投資信託となります。つまり「複数の株式が混ざっているもの」という点は投資信託と同じです。
ETFは上場しているので、株式のように1日のうちに何度も価格が上昇したり下降したりします。そしてETFは株式と同じように、リアルタイムで売買することができます。
ETFは、内容が投資信託に似ていて売買方法が株式に似ているもの、というイメージです。
●REITとは
REITはリアル・エステート・インベストメント・トラストの略で、不動産投資信託と訳されます。REITは株式ではなく不動産を扱っています。
REITを販売している会社は、投資家が投資したお金を使って不動産を運用します。不動産運用とは、賃料を得たり売却して売却益を得たりすることをいいます。その運用益が投資家(REITの購入者)に分配されます。ただ、不動産価格が値下がりすればREITの購入者は損失を抱えることになります。
REITも上場しているので、価格は1日に何度も変動し、リアルタイムで売買できます。
スマホ投資の始め方とやり方
スマホ投資の始め方を、SMBC日興証券株式会社が運営している日興フロッギーを例に取って紹介します。他社のスマホ投資もおよそこのとおりに始めることができます。
ステップ1 証券会社に口座を開く
スマホ投資も通常の投資と同じように、株式投資をする人が証券会社に口座を開設し、そこに資金を入金し、その資金の範囲内で株式などを買ったり、保有する株式などを売却したりします。
日興フロッギーの場合は証券会社がSMBC日興証券なので、同社に口座を開くことになります。口座開設は公式サイトから行います。個人情報を入力し、本人確認の書類をアップロードするだけです。本人確認の書類は、コピーを郵送することもできます。
ステップ2 売買できる商品を選ぶ
日興フロッギーで売買できるのは、上場している株式、ETF、REITです。日興フロッギーは投資信託を対象外にしていますが、他社のスマホ投資には投資信託を買えるものもあります。
ステップ3 株式を買う
口座を開いて資金を入金したら、スマホに日興フロッギーのアプリをダウンロードします。そのアプリで購入したい株式などを検索し、購入金額を決めて「買う」ボタンをタップすると株式などを購入できます。
これで株主になります。
100円から買うことができる
日興フロッギーでは株式などを100円から買うことができます。それ以上は100円単位で購入します。つまり、100円、200円、300円…1万円、1万100円といったように買っていきます。100円から株式を買えることがスマホ投資の最大のメリットといえます。
スマホ投資と比較するため、通常の株式の購入方法を紹介します。
例えば2022年9月20日のトヨタ自動車の株価は2,048円でした。通常の株式の購入方法では、大抵は100株以上、100株単位で買わなければなりません。
つまり通常の株式の購入方法では、トヨタ自動車株を買うには最低でも204,800円(=2,048円×100株)の資金が必要です。
しかし日興フロッギーなら、1株2,048円のトヨタ自動車株を「100円分だけ」を買うことができます。
まとめに代えて~リスクはスマホ投資も同じ
スマホ投資は少額から気軽に始めることができますが、リスクの大きさは通常の株式の購入方法とまったく同じです。
例えば、スマホ投資で株式を100円分買い、その株価が2%値下がりしたら2円の含み損を抱えることになります。2円であれば「それくらいの損失なら気にしない」と思えるかもしれません。
しかしスマホ投資でも、例えば100万円分の株式を買うことができます。このとき株価が2%値下がりしたら2万円の含み損を抱えることになります。2%値下がりするという現象は同じでも、投資した額によって含み損の金額がまったく変わってきます。
では購入した株式が上昇したらどうなるでしょうか。
100円で株式を買って株価が2%値上がりしても2円しか含み益を得ることができません。
これでは「物足りない」と感じるでしょう。そして「あのとき100万円分買っていたら、今ごろ2万円の含み益が出ていたのに」と悔しがるかもしれません。
このようにして株式投資にのめり込んでいってしまう危険性は、スマホ投資も通常の方法での投資も同じです。
財務省がいうように、少額、継続、長期投資を心がけたほうがよいと思います。