クレジットカードを使った「投信積立」が注目を集めている理由
クレジットカードを使った投信積立という投資が注目を集めています。
投信積立とは、毎月1回、あらかじめ決めておいた金額で、あらかじめ決めておいた投資信託(以下、投信)という金融商品を買う投資手法です。投資信託とはファンドとも呼ばれ、投資の専門家が、投資家からお金を集めて株式や債券などに投資し、その運用益の一部を投資家に戻す金融商品です。
クレジットカードは、物を買うためのツールなので、投信を買うことができるわけです。
例えば、一度手続きをするだけで、毎月自動的にクレジットカードから100円ずつ支払われ、100円分の投信を買うことができます。投資をしたことがない人には、この手軽さは魅力的ですが、欠点もあります。
基礎的な知識
クレジットカードを使った投信積立について、基礎的な知識を紹介します。この金融商品は「クレジットカード」「投信」「積立」の3つにわけて考えると理解しやすいでしょう。
儲ける手段だが損をするリスクがある
まず投信(投資信託)についてですが、これは、個人向けの投資の1つです。投信を買う個人のことを、個人投資家といいます。
投資とは、自分のお金で金融商品を買って、その金融商品の値上がりを待つ儲け手法です。預貯金も、わずかでも利子が出るので、金融商品を買って値上がりを待つ投資と考えることができます。
投資には、もう1つ重要な性質があります。それは損をするリスクがあることです。金融商品は値下がりすることがあり、値下がりした段階でその金融商品を売ってしまったら損をします。投信も同じで、儲けることができたり、損したりします。
投信は株式投資と似ている
投信はさまざまなものを扱っていますが、ここでは株式の投信について解説します。
株式の投信は、株式の投資とほぼ同じです。株式の投資も株式の投信も、ある会社の株式を買って値上がりを待ったり配当金を待ったりする儲け手法です。
株式の投資では、個人投資家が自分の判断で購入する株式を決めますが、投信では運用の専門家に株式を選んでもらいます。ただ、投信の1つひとつの商品は「この投信では、A社とB社とC社の株式を買っている」と明示されているので、個人投資家はその内容を見て購入する投信を選ぶことになります。
投信は「10,000円分買う」「1,000万円分買う」といったように、個人投資家が自分の懐事情に合わせて買うことができます。
運用の専門家の投資が成功すれば、その投信を買った個人投資家に、分配金や償還金という名目のお金が支払われます。また、投信は値上がりすることがあるので、そのとき個人投資家がその投信を売れば売却益を得ることができます。
運用の専門家の投資が失敗したり、投信が値下がりしたりすれば、その投信を買った個人投資家は損をします。
投信積立は定期預金感覚だが預貯金ではない
投信積立は、積立方式で投信を買い進める方法です。
投信は証券会社を通じて購入します。投信を買うには、個人投資家は証券会社に口座をつくり、そこに現金を預け入れておく必要があります。そして個人投資家は、投信を買うときに、証券会社に「Aという投信を30万円分購入するように」と指示します。すると証券会社は、個人投資家の名義でA投信を30万円分購入します。
投信積立では、個人投資家は証券会社と、例えば「Bという投信を毎月3万円ずつ購入する」という契約を結びます。そうすると証券会社は、毎月機械的にB投信を3万円分ずつ買っていきます。個人投資家が証券会社に「もう買わなくてよい」と指示すれば、証券会社は買つけを止めます。
投信積立の形式は、定期預金に似ていますが、まったくの別物なので注意してください。
定期預金は利子の額が少額である代わりに、元金が減ることはほぼありません。しかし、投信積立の場合、3万円で買った投信の価値が、後日4万円に値上がりすることも、2万円に値下がりすることもあります。
例えば、毎月3万円ずつ投信積立をすると、10カ月で30万円分の投信を買ったことになりますが、その価値が40万円になるかもしれないし、20万円になるかもしれません。投信積立の利益または損失は、景気、企業の業績、政局、世界情勢などによって決まります。
クレジットカードで投信積立をするメリットとデメリット
投信積立の解説は以上になります。
クレジットカードを使った投信積立とは、投信積立という投資をするときに必要なお金の支払いを、クレジットカードで行うことです。もしくは、投信積立という金融商品をクレジットカードで買うこと、ともいえます。そのメリットとデメリットを考えてみます。
投資の敷居が低くなり、ポイントがもらえる
メリットは3つあります。
- ●日頃の買い物でクレジットカードを使っている人は、支出の管理がしやすくなる
- 月100円から投信積立ができる
- クレジットカードのポイントが貯まり、それを投資の利益と考えることができる
投資をしたことがない人には、投資は敷居が高いものに感じるのではないでしょうか。しかし政府(金融庁)も日本銀行も、国民に投資をすすめています(※1、2)。投資は、労働以外で資産を増やすことができる貴重な手段だからです。
ただ、投資にはリスクがあるので、簡単な方法で超少額から投信積立を始められることは、とても重要です。投資にチャレンジしやすくなりますし、投資の練習になります。
月100円の投信積立なら、仮に5年続けて価値が半額になっても3,000円(=月100円×12カ月×5年÷2)しか損をしないで済みます。
クレジットカードで投信積立を買うことは、クレジットカード会社にとっては普通の買い物をしてもらったのと同じなので、利用者にポイントを付与しています。
ポイントは、利用者にとっては、投信積立を買ったことで得た金銭的利益とみなすことができるので、投資の利益と考えることができます。少額投資でのポイントの金銭的価値はそれほど多額ではありませんが、それでも投資の利益を簡単に得られれば「投資を始めてよかった」と思えるものです。
※1:https://www.fsa.go.jp/ordinary/investment.html
※2:https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/hyakka/part2/toshin/
少し面倒くさい?
投信積立には、リスクがあること以外にもデメリットがあります。それは、手続きが煩雑なことです。面倒くさいと感じる人もいるでしょう。
投信積立を始めるには、証券会社を選び、そこに口座をつくり、銀行口座からその証券会社口座にお金を移動して、よさそうな投信積立商品を選び、購入する、という手続きを踏む必要があります。
さらに、投信積立の利益が出てそれを現金化するときにも、証券会社口座のお金を銀行口座に移し、銀行口座から引き下ろさなければなりません。また、利益が多額になれば、確定申告が必要になります。さらに、クレジットカードで投信積立を買うのであれば、当然ですがクレジットカード会社と契約しなければなりません。
証券会社とカード会社がタッグを組んで投信積立サービスを提供
クレジットカードで投信積立を買うことができるサービスは複数の会社が提供しています。ここではそのなかから、2つのサービスを紹介します。
SBI証券×三井住友銀行
証券会社のSBI証券と、カード会社の三井住友カードは2021年6月から、クレジットカードを使った投信積立サービスを開始します(※3)。
積立設定金額は、毎月100~50,000円です。毎月10日までに積立設定の申し込みを締め切り、翌月1日に投信積立商品を設定金額分だけ購入します。このサービスを利用するには、SBI証券に口座を開き、三井住友カードのクレジットカードを保有する必要があります。ポイント還元率は0.5%です。
※3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000441.000007957.html
楽天はグループ内で完結する
楽天は、グループ内に証券会社もクレジットカード会社もあるので、クレジットカードを使った投信積立がグループ内で完結します(※4)。楽天カードや楽天のネット通販を多用している人は親しみやすいでしょう。
楽天の積立設定金額は毎月100~50,000円です。ポイント還元率は1%(=100円につき1ポイント)です。
※4:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/rfund/guide/creditcard.html#skip01
まとめ~投資デビューに良いのでは
クレジットカードを使った投信積立にはもう1つデメリットがあります。それは、超少額で投資を始めることができてしまうことです。超少額投資はメリットにもデメリットにもなります。
投信積立で毎月100円ずつ投資した場合、10年間投資しても元金は12,000円です。仮にこのお金が2倍になっても24,000円にしかならず、利益は12,000円(=24,000円-12,000円)です。投資の世界で「元金が2倍になる」ことはすごいことですが、10年間の利益が12,000円ではそれほど喜べないでしょう。
投資の「うまみ」も「痛み」も投資額が大きくなるほど大きくなります。
クレジットカードを利用した投信積立は、これから投資デビューをする人に適しているかもしれません。これで得と損を経験して、投資情報を集める訓練を積み、要領がつかめてきたら少しずつ投資額を増やしてみてはいかがでしょうか。