決済関連

クレジットカードなのにカード不使用?止まらぬ進化、機能勝負の時代に

クレジットカードの進化が止まりません。各社はユーザーを取り込もうと、新たな機能をクレジットカードに次々搭載しています。

なかでもユニークなのが、三井住友カードのカードレスです(※1)。クレジットカードなのにカードを使わないというのです。カードがなくなると、クレジットカードはどれくらい便利になるのでしょうか。

その他にも、ちょっとした工夫からサービスのてんこ盛りまで便利合戦は加熱の一途で、利用者には嬉しい限りです。
クレジットカード進化論をみていきましょう。

※1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB284UV0Y1A920C2000000/

三井住友カードのカードレスの内容

三井住友カードのカードレスは、スマホアプリを使うことで物理的なプラスチック製カードを廃止しました。もちろん、プラスチック製カードを希望する人は、従来どおりのカードが配布されます。

スマホのアプリにカード情報を入れた

プラスチック製のクレジットカードには、氏名などのカード情報が記載されていますが、そのカード情報を、三井住友カードのスマホアプリに入れてしまいます。これにより、カードを持たなくても、スマホさえあればクレジットカードの決済サービスを利用できるようになります。これでカードレスになるわけです。

利用する店に決済端末のVisaタッチがあれば、スマホをかざすだけで支払いができます。ネット通販でクレジットカードを利用するときは、スマホアプリからカード番号をコピーして使うことになります。

スマホのヘビーユーザー向け、申し込みして即利用も可能に

三井住友カードがカードレスに踏み切ったのは、スマホでなんでも済ませたいと考えるスマホ・ヘビーユーザーの支持を得るためです。

スマホ決済とクレジットカードの両方を持っていても、スマホ決済を使える店に行くのであれば、クレジットカードが入った財布を自宅に置いておき、スマホだけを持って外出することができます。

三井住友カードのカード情報がスマホアプリに入っていれば、その場合でもクレジットカードを使ってもらえます。また、カードレスなら、クレジットカードの申し込みがあった場合、審査がとおったらデータを申込者のスマホに送信するだけで済みます。三井住友カードのカードレスは、申し込みから最短で5分で利用できるようになります。

プラスチック製カードを郵送してもらうよりはるかに速く便利です。

プラスチックを使わない環境効果をアピール

クレジットカードには5グラムのプラスチックが使われていて、その二酸化炭素の排出量は製造するときと廃棄するときを合わせて25グラムになります。

三井住友カードでは5年で1,000万枚のプラスチック製カードをカードレスに移行する計画を立てていて、これで250トンの二酸化炭素を削減できるといいます。

コストダウンにもなる

カードレスは、三井住友カードにコストダウン効果ももたらします。

プラスチック製カードの発行は製造や郵送などで1枚約1,000円かかり、この費用はカードを発行するたびに発生します。一方、カードレスは、システムやアプリなどの開発に費用はかかりますが、一度構築してしまえば発行コストはほとんどかかりません。

三井住友カードは、コストダウンで浮いた資金をキャッシュバックなどの原資に回すとしています。

裏面に書くという、ちょっとした工夫も

三井住友カードは、プラスチック製カードにも工夫を凝らしています。一般的なプラスチック製クレジットカードは、表面に氏名やカード番号、有効期限が書かれてあります。三井住友カードは2020年に、これらの情報をすべて裏面に書くようにしました。

こうすることで、利用者が店でクレジットカードを差し出したときに、周囲の人に盗み見されずに済みます。

Visaのタッチ決済

Visaは、スマホ決済のように、かざすだけでよいタッチ決済方式を採用しています(※2)。

店でVisaのクレジットカードを使うとき、店に置いてある端末にプラスチック製カードをかざすだけで決済が完了します。つまり、カードを端末に差し込んだり、暗証番号を入力したり、サインする必要はありません。

Visaのタッチ決済マークが掲げてある店で使うことができます。

※2:https://www.visa.co.jp/pay-with-visa/featured-technologies/contactless.html

サービスてんこ盛りの楽天銀行カード

多くの銀行が、キャッシュカードとクレジットカードを合体させたカードを発行していますが、楽天銀行はその合体カードにさらに多くのサービスを盛り込んでいます(※3)。

キャッシュカードとクレジットカードを合体させるメリットは、所有するカードが1枚減るので財布が膨らまずに済むことと、管理する面倒が減ることです。複数のクレジットカードを使いわけて特典を集めている人には便利な機能でしょう。

楽天銀行カードは2つのカードを合体させただけでなく、給与の受け取り口座にするとポイントを付与するサービスも提供しています。そのポイントは振込手数料として使うこともできます。したがって、勤め先の会社から振り込まれた給与をすぐに別の銀行口座に振り込むとき、実質的に無料で送金できることもあります。

楽天のネットショップでもこのポイントを使うことができます。さらに、スマホアプリで毎月の利用額を管理、確認することも可能です。
楽天には証券会社があり、ポイントで株式投資や投資信託投資をすることもできます。

「経済圏(エコシステム)」という言葉がありますが、楽天銀行カードは、楽天経済圏に入るパスポートのようなものです。

※3:https://www.rakuten-bank.co.jp/card/rc/

スマホとの連動を強化したKyash

株式会社Kyash(本社・東京都港区)は、Visaのクレジットカードとスマホの連動を強化したサービスを提供しています(※4)。

冒頭で紹介した三井住友カードのカードレスもスマホ連動タイプといえますが、Kyashはもっとスマホを使います。Kyashのクレジットカードで買い物をすると、リアルタイムでスマホアプリに利用明細が記載されます。

またスマホアプリを使って、1)1回ごと、月ごとの利用上限を設定できる、2)海外の店で利用できるようにしたり、利用できないようにしたりできる、3)オンライン決済を利用できるようにしたり、利用できないようにしたりできる、といったことが可能になります。

その他にも次のような機能が備わっています。

●KyashでもVisaのタッチ決済が使える
●アップルペイやグーグルペイに対応している
●割り勘や送金ができる

※4:https://www.kyash.co/kyashcard

まとめ~背景にキャッシュレスの主導権争い

キャッシュレスという言葉は最近のもので、以前はクレジットカードがキャッシュレスの代名詞になっていました。

スマホ決済が登場したことで、クレジットカードを含めて現金を使わない決済方法をキャッシュレスと呼ばれるようになりましたが、スマホ決済のほうが注目されている印象があります。

実際は、キャッシュレスの大半はいまだにクレジットカードなのですが、それでもスマホ決済に脚光が集まるのはスマホが人々の生活に欠かせない必需品になっているからでしょう(※5)。クレジットカードのスマホ化は自然な流れといえます。

家電でも電子機器でもスマホと連動させることで利便性を高めているので、クレジットカードの進化もまだまだ期待できます。

※5:https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200626014/20200626014-3.pdf