キャッシュレス決済未対応だと顧客への影響はどの程度あるのか?
近年、キャッシュレス決済サービスの急増により店舗にとって決済ツールの導入は欠かせないものと言えます。
きっかけを作ったのは、国が行った「キャッシュレス・消費者還元事業」。結果として国内でのキャッシュレス決済ツールを導入している中小店舗は約36%(2020年5月調査)となりました。
数字的に見れば少ない割合とも取れますが、以前に比べてキャッシュレス決済を導入した店舗は大きく増加したと言えます。
では実際に、キャッシュレス決済がどの程度影響しているのか?
キャッシュレス決済を導入した理由
MMD研究所とSquareが、キャッシュレス決済を導入しているオーナー500人に“導入した理由があるか?”を調査したところ、以下のような結果となりました。
調査結果から「キャッシュレス・消費者還元事業に対応したかったから」という理由が最も多く、国策の狙い通り導入店舗の増加に繋がった結果とも言えます。
2番目に多かったのは「キャッシュレス対応していないことによる機会損失を減らしたいから」という理由です。どちらも共通して言えるのは、店舗側がキャッシュレス決済の利用が増えることを見越して導入したということ。
キャッシュレス・消費者還元事業により消費者側も還元が受けられるが、対象店舗でなければ還元されないため、店舗側にとっても機会損失が増えることとなります。その結果、キャッシュレス決済を導入せざる得ない店舗が増加したと思われます。
導入可否による消費者の動向
一時的な国策によって対応する店舗が増えたとも捉えることができる一方、消費者としてはキャッシュレス決済の定着が根付きつつあるのかもしれません。
キャッシュレス決済利用者に調査した結果によると、利用者の3割以上が「キャッシュレス未対応が理由で来店をやめたことがある」と回答しています。
キャッシュレス決済を利用する側も、キャッシュレス・消費者還元事業によって増加しただけではなく、支払いの手段として選ぶ消費者が増えていることが分かる結果だと思います。
その理由とも言えるのが、キャッシュレス決済を導入している店舗であるかを事前に確認している利用者が多いということ。キャッシュレス決済利用者の4割近くが検索して店舗を利用しており、キャッシュレス決済を主な支払い手段として選ぶ人が増えたと言って良いでしょう。
また、キャッシュレス未対応店舗を理由に店舗に行くことをやめたと回答している利用者を詳しく見ると、性別によって差が出ているのが分かります。
男性の方が女性よりも店舗に行くのをやめたケースが多く、年齢層ではそれほど差がないのが調査結果から分かります。
年齢が若い人ほどキャッシュレス利用者が多く、歳を重ねるごとに減っていく傾向にありますが、キャッシュレス決済の導入がもたらす効果は年齢に関係ないと言えるかもしれません。その為、現状ではキャッシュレス決済の導入は店舗側にとっての“一つの販促ツール”として捉える必要がありそうです。
キャッシュレス決済を導入したオーナーの意向
キャッシュレス決済利用者への調査結果を見て、影響を受けるオーナーも少なくありません。調査結果を見て回答した結果が以下の通り。
全ての項目において「継続利用をする方が望ましいのではないか」という心情が出た結果にも感じます。一方でキャッシュレス決済利用者の回答を見たキャッシュレス決済未対応店舗の回答もあります。
「キャッシュレス決済未対応店に行かない」という結果を確認後、導入しようと考えるオーナーも多く、見る前と後では考え方が変わっているのが13%もいることが分かります。店舗側にとって、目に見えた消費者のニーズに対応せざるを得ない状況と感じた結果と言えるでしょう。
キャッシュレス決済導入後に感じた不満点
しかし、店舗側にとってもキャッシュレス決済を導入していることに関して良いことばかりとは感じてはいないようです。
「キャッシュレス決済導入後に感じた不満点」を調査した結果が以下の通り。
6割以上のオーナーが導入後に何らかの不満を感じています。特に、導入したオーナーの半数が「キャッシュレス決済に必要な費用や入金までに時間がかかる」ことを理由に挙げているのが分かります。
キャッシュレス・消費者還元事業では、導入の費用や手数料の負担を軽減できるよう国が補助してきました。しかし、補助期間が終了した今では重荷に感じる店舗も少なくないようです。
他の先進国に比べてキャッシュレス決済が遅れている日本では、今後さらにキャッシュレス決済を促進させる動きが加速することが予想されます。その為、キャッシュレス決済が減ることは当然考えにくいでしょう。
店舗側にとっては、キャッシュレス決済の手数料や維持費を負担する上で、今後消費者とのニーズバランスを考えていくことが大きな課題かもしれません。