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【加熱するNFT】創業者のツイートが3億円…新たな財産になるのか?

ツイッター創業者でCEOのジャック・ドーシー氏が初めてツイートした言葉はこうでした。

●just setting up my twttr(私はたった今、ツイッターを設定しているところだ)

この世界初のツイッター上のツイートの一言が2021年3月に、約3億円(2,915,835ドル47セント)で買われました。つまり「just setting up my twttr」という文字が3億円で売れたわけです。

購入者であるIT企業のCEOは「将来、モナ・リザと同じくらいの価値を持つようになるだろう」といいました(※1)。

3億円の「just setting up my twttr」と、今この記事にこのように書いている「just setting up my twttr」の違いは、NFTがついているかどうかです。

NFTは、3億円の「just setting up my twttr」が本物であることを証明し、同時に、今ここでこうして書いている「just setting up my twttr」が単なるコピーであることを証明しています。

NFTは、デジタルデータを新たな財産にする可能性を秘めていますが、すでにバブルであるとの批判する声も出ています。

※1:https://www.afpbb.com/articles/-/3338154

NFTは電子データが本物であることを証明する

NFTはNon Fungible Tokenの頭文字で、非代替性トークンと訳されます。

非代替性もトークンも聞き慣れない言葉です。トークンとは「それがそれであること」を認証する技術のことで、さまざまな種類のトークンがあります。

トークンとは「それがそれであること」を認証する技術

例えば、クレジットカードには、カード番号やパスワードといった安全を確保する仕組みがありますが、これらが誰かの手に渡ってしまうと不正利用されてしまいます。

そこで、ネット通販でクレジットカードで支払うときに、使い捨てのパスワードを使うと、その支払いが終わったらそのパスワードは使えなくなるので盗まれても問題ありません。この使い捨てパスワードのことをトークンと呼びます。

「その使い捨てパスワードが、そのクレジットカードの利用者のものである」ことを認証しているのでトークンといえるわけです。

NFTはイーサリアムのシステムを借りている暗号資産

NFTはどの類(たぐい)のトークンなのかというと、暗号資産です。では、NFTはビットコインの仲間なのかというと、半分そうで、半分違います。NFTは、イーサリアムという暗号資産のシステムを「借りている」暗号資産です。

暗号資産イーサリアムの事業では、ブロックチェーンというシステムでイーサリアムという暗号資産を運用しています。

NFTは、イーサリアムのブロックチェーン(システム)を借りていますが、イーサリアムとは関係ない暗号資産です。

この説明を聞くと、次の2つの疑問が湧くと思います。

  • 疑問A:なぜわざわざNFTをつくったのか。なぜ直接イーサリアムを使わないのか。
  • 疑問B:なぜNFTを使うのか。現金では駄目なのか。

なぜわざわざNFTをつくったのか

暗号資産はイーサリアムやビットコインなどがあるのに、なぜわざわざNFTをつくったのでしょうか。それは、新規ビジネスだからです。

ある事業者が、NFTを使って新規ビジネスを始めたことでNFTが誕生しました。暗号資産イーサリアムを使うと、イーサリアムのルールで動かなければなりませんが、NFTを立ち上げれば自分たちのルールでビジネスを進めることができます。

なぜNFTを使うのか

なぜNFTを使うのか。現金では駄目なのか。その答えは、現金では駄目で、なぜなら現金ではデジタル財産の売買がしにくいからです。

デジタル財産にはCG画像や音楽のデジタルデータなどがあります。そして「just setting up my twttr」などの文字データもデジタル財産です。

デジタル財産はコンピュータでほぼ無限にコピーできてしまい、しかも本物とコピーはまったく同じものになります。そのため、例えば「これはオリジナルのCG画像に違いない」と思って買っても、コピーかもしれません。デジタル財産では本物とコピーはまったく同じなので鑑定で判定できません。

これでは恐くて、現金を支払ってデジタル財産を買うことはできません。

デジタル財産でない財産なら、安心して現金で買うことができます。例えば、本物のモナ・リザは1枚しかないので、美術鑑定士が本物であると保証すれば、現金をいくら支払っても安心です。

ここで新たに次の疑問が湧くと思います。

●なぜデジタル財産の売買にNFTは都合がよいのか

NFTはデジタル財産の売買に都合がよい

NFTはデジタル財産にぴったりくっついているイメージです。

NFTは暗号資産イーサリアムのシステムを使っています。1イーサリアムに1イーサリアムの価値があることは、イーサリアムのシステムが保証しています。そのため、1イーサリアムと現金を交換することができます。

あるデジタル財産が3億円の価値があったとします。このとき、NFTつきのデジタル財産を、3億円分のイーサリアムで売買することができます。なぜこの売買が成立するのかというと、イーサリアムのシステムが、NFTつきのデジタル財産が本物であることを保証しているからです。

A氏が自分のNFTつきデジタルアートを、B氏に売ったとします。B氏はイーサリアムか現金をA氏に支払います。次に B氏は、そのNFTつきデジタルアートをC氏に売ることができます。C氏はNFTがついているので、そのデジタルアートが本物であるとわかるので安心して買うことができます。

●なぜデジタル財産の売買にNFTは都合がよいのか

その答えは、NFTであれば、デジタルアート(デジタル財産)が本物であることをイーサリアムのシステムが保証してくれるので安心して売り買いできるからです。

NFTの将来性:東大や京大やメルカリも

デジタル財産のオリジナル性が保証できることは画期的なことです。

モナ・リザの絵はネット上でいくらでもみることができますが、それでもルーブル美術館にあるモナ・リザの価値は一向に下がりません。それは世界中の人々がルーブル美術館にあるモナ・リザだけがオリジナルであることを知っているからです。

しかしデジタル財産は、オリジナルもコピーも質的量的価値的にまったく同じなので、オリジナルに特別な価値がありません。ところがNFTでデジタル財産のオリジナル性が保証されるので、オリジナルの価値は理論上は次第に上がっていくはずです。

NFTは将来が期待されているコンピュータ技術で、東京大学や京都大学やフリマアプリのメルカリも参入しています。

大学の資金でアートIC証明書開発に投資

NFTのインフラをつくっているスタートバーン株式会社(本社・東京都文京区)は、東京大学や京都大学が関連するベンチャーキャピタルから、約11億円の資金を調達しました(※2)。同社はこの資金を、アート作品にICタグをつけて証明書にするシステムを開発します。

ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業などに投資をする会社のことです。

東京大学には株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(以下、UTEC)というベンチャーキャピタルがあり、大学の機関と連携してサイエンスやテクノロジーを研究、開発する企業を支援しています。UTECはこれまでに110社に投資をして、うち13社が上場しています(※3)。

京都大学のベンチャーキャピタルは、京都大学イノベーションキャピタル株式会社といいます。創薬の会社や自動採血機メーカー、AIで人材マッチングをする会社などに投資をしています(※4)。

※2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB114VO0R10C21A5000000/
※3:https://www.ut-ec.co.jp/about_utec/firm_profile
※4:https://www.kyoto-unicap.co.jp/portfolio/

デジタル中古品の流通を目指すメルカリ

メルカリは2021年6月、暗号資産事業に参入すると発表しました(※5)。暗号資産は今でも高い資産価値を維持していますが、いわゆる暗号資産ブームは数年前に去っています。そのため、なぜメルカリは今ごろ参入するのかと疑問視されました。

メルカリの狙いはいくつかありますが、デジタル中古品の流通を促進することもその1つです。

メルカリが現在提供しているのは、誰でも簡単に自分の不用品(中古品)を売却できるサービスです。それと同じように、中古のデジタル財産を売り買いできるサービスを提供しようというわけです。

これまでデジタル財産には権利という概念が希薄でした。しかしNFTによってデジタル財産の価値が上がって市場が拡大すれば、権利を明確にする必要が出てくるでしょう。メルカリはそれを狙って、NFTに近い暗号資産事業に参入しました。

※5:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC085O70Y1A600C2000000/

まとめ~大暴落か、コンテンツ産業の起爆剤か

NFTビジネスでは今、世界初のツイートだけでなく、さまざまなデジタルアートに「千万円」単位や「億円」単位の価格がつけられています。

暗号資産業界やブロックチェーン業界からは、NFTはすでにバブル化しているとの指摘も出ています。それは直感的に理解できます。世界中の中央銀行が金融緩和を進めているので、世界中にカネ余りが起きています。

一時ビットコインが急騰したのもその余波ですし、NFTバブルもカネ余りが起きていなければ発生していなかったでしょう。

もしNFTバブルが崩壊したら、NFTつきの3億円の「just setting up my twttr」も、今この記事に書いている「just setting up my twttr」も同じ価値になってしまいます。

しかし、デジタル財産のオリジナル性を保証する技術は、デジタルアートの作家たちから歓迎されています。そのためNFTは、コンテンツ産業の起爆剤になるかもしれません。しばらく注視する必要があるでしょう。